《そしてカウントダウンが始まる》

 2004年7月27日、幕張ベイタウンは多少曇り気味。
 月齢9.7のハーフ・ムーンは、まだ空にのぼっていない。
 384,400kmという月への道のりは、この街の交差点で、
残りの距離10,000kmのラインを越えた。
到達のその日まで、静かにカウントダウンが始まった。

 
 計算通りに走ることは、なかなかできない。
 なにかの節目の距離を刻むときには、日常とは少し異なる風景の中にクルマを置いて、ちょっとでもかっこよい写真を撮ってみたいと思う。
 だから、37万kmを越えるときには、その景色をねらって距離計算をやった。
 月までの距離が4桁台に移行されるというタイミングは、実は計算はされていた。先週末の風越山系ツーリングの帰路をわざと大回りして、中央道を途中で降りて八ヶ岳と浅間山を経由した。
 138kmほど、足りなかった。
 月曜日はSOHOとなっていたため、らすかるを走らせることはほとんどなく、残りの距離は火曜日の通勤途上に刻みそうな気配となった。
 幸か不幸か、オフィスに到着してもなお、オドメータは少しだけ、自由に走れる余地を残してくれた。
 そうだ。昼食をあそこに食べに行こう。
 一定のマナーの範疇で、目抜き通りに路上駐車できる、実験的な街。延々と停めておくことはできないが、この試みはとても好きだ。
 山間の林道でも、海岸線でも、エスクードは景色にとけ込む。それは街かどでも同じことだ。イレギュラーな計算ミスが、拾い物に変わることもある。
 月への到達まで、あと10週間というところへやってきた。残りの1万kmを、この街かどから走り出す。