一歩、踏み出す勇気
ももかさん  TA11W  

 2005年の夏、つくばーどの看板とも言えるエスクード、とるねーどらすかるが事故によってロストした。ほぼ同時期、遠く離れた津軽の青い森で、1人のエスクード乗りが誕生しようとしていた。第三者にはわかりにくいことかもしれないが、そのエスクードと初めてであったとき、二度と戻らないはずの、とるねーどらすかるの幻を見た思いになった。
 ももかさんが95年型のV6ハードトップを選んだことは、偶然に過ぎない。ところがその胸のうちには、自分の殻を打ち破りたいという小さな火種が宿っていて、一歩踏み出す勇気をエスクードに求めていたのだという。

 「この車は初めて自分の意思(思惑)で買った車です。
 初めての普通車、初めての本格的は4WD車。あんなところも行ける、こんなところだって行けるんだ。雪道だって平気。
 こんな風に購入前から色々なシーンを想像してワクワクしていました。
 でも、初めてだらけだったので、わたしに似合うかしらとか、わたしに乗りこなせるかしらと迷い、不安がありました」

 ある日、エスクード仲間が開いているサイトの掲示板に、一つの質問が投稿された。中古車のエスクードを購入検討中で、AT仕様にあるパワーモードとノーマルモードの使い方がわからないというものだった。
 場違いですか? 質問の末尾に加えられた問いかけ通り、エスクード仲間のうちでもマニアックなサイトに迷い込んでしまった彼女だったが、サイト主は辛辣ながらも適切なアドバイスを返した。
 このファーストコンタクト次第では、彼女とエスクードとの邂逅はなかったかもしれない。
 そう思っていたのだけれど、どうやらそれは思い過ごしで、彼女にはエスクードを手にするひとつの目的があったようだ。
 
 「それまでのわたしは、何をするにも『石橋を叩いて、叩いて、また叩いて』と、慎重過ぎるというか臆病というのか優柔不断な自分が嫌で嫌で仕方がありませんでした。
 購入する際の思い切り・・・  そう、『一歩、踏み出す勇気』。これに気付かせてくれたのがこのエスクードです。この『一歩』があったからエスクードという輪の中にいられるんだと思います」

 しばらくすると、今度はエンジンノイズや駆動系からの摩擦音などについて、質問の内容が変化した。TA11Wを手に入れたのだという。車体色こそ異なるが、ロストしたとるねーどらすかると同型。この時期にその偶然? 彼女は夏の間ずっと、一つ一つのアドバイスを持ち帰っては、修理と部品の交換を繰り返していた。

 「この車の事がもっと知りたい。出来ることは自分でやろうと。知識、技術は全くないけど、愛情があります。多分、自分の子供の様に思っているかもです。もの言わぬ車だけど、色んな異音で語りかけてくれます。あれっ?何処か調子悪いの? ここ?どんな具合いなの? 手をかけてあげないとすぐにすねる子供の様でした」

 足回りを交換したり、古いパーツを探してきては取り付けたり、男の子顔負けの頑張りが伝わってきた。彼女ならば、とるねーどらすかるのパーツを委ねてもいい。打診をした。快諾が戻ってきた。そして冬が来る前に、彼女はとるねーどらすかるの姿を引き継ぎ、青い森から、その姿を見せるために走ってきてくれた。

 「街で見るかっこよく、また、かわいく着飾ってる親子のイメージと重ねているのかも知れませんね。この車と出会えて、色々な方と出会えて、楽しく過ごさせていただいてます」

 踏み出した一歩は、勇気から元気に変わっていく。