苺狩りの季節 

 物書きと密教と超古代史と怪しいもの全般の師匠である、赤まんと某の奥方の実家に、ことしもイチゴ狩りにお呼ばれした。
 市場出荷のあと、別の苗を植え込む少し前に、ビニールハウスのいくつかを開放してくれる。といっても収穫に値しなかった残り物をとるのではなくて、この日のためにイチゴ狩り専用のハウスを用意してくれているのがすごい。
 集まってくる仲間たちはFOOTMARKSという喫茶店を介して、仕事や遊びで知り合った人々。娘たちはおろか結婚する前には、そこの四駆クラブに顔を出していたけれど、今は昔のお話で、現在もその手の車に乗っているのは、僕と赤まんと某だけとなったようだ。
 イチゴはとちおとめ。出荷されないから小粒なのかと思いきや、これもとんでもない誤解で、粒も数ももちろん味も、恐れ入りましたの一級品。えっ、こんなに食い放題とり放題しちゃっていいんですか? と遠慮していると、ほかの仲間がどんどん収穫してしまう。まあ霰も霙もそんなに貪欲にならなくてもいいよと好きなようにさせておいて、汗だくになるハウスを一足先に脱出するのが毎年のパターンだ。
 みんなが収穫を楽しんでいる間、畑のご主人や赤まんと夫妻と世間話を繰り広げる。30年前だと超古代文明から密教の奥義、土浦の怪しいジャズ喫茶の話で盛り上がったものだが、最近はそのあたりの話題は達観してしまったのか、裏の欅の枝振りによって来年の収穫がわかるだとか、この冬は重油の使用量が多くなりそうだとか、いたってまともな対話をしている。
 我が家で収穫したイチゴは、そのまま食べる分を仕分けして、ジャムを作る。実をすりつぶして、ことことと煮込みながら灰汁を取り除く。発色のよい天然ジャムを作るためには、レモンの果汁も必要。そういったノウハウを、遊びの延長で、れいんさんが教えていく。ことしもしばらくの間、朝食はイチゴジャムの恩恵にあずかれる。