初めての海
海水浴に連れて行かない父親’01
 「うみってこわいの?」
 「うみはおっきいんだよ」

 この冬には6歳になる霰は何度目かの波打ち際遊びですが、4歳前の霙はこれまで、海に近づいたことさえありません。でも、そろそろやってみようか?
 「ほらこわくないよーっ」
 「うるさくてきこえないよー」

 
ねーちゃんはその昔、河川敷の泥の中に転げ落ちたことがあります。それ以来けっこう肝が据わっています。なんといっても海の水は泥んこにはならないので、それだけでもずっといいらしいですが、ほんとは海の方がおぼれたり流されたりすると怖いんだぞ。
 けれども妹を安心させようと、波が来るとき逃げ出すタイミングを教えたり、どこまで前に出ると膝まで浸かれるかを試してみたりで、なかなか果敢です。
 とーちゃんの隣で足跡くらべをしていた霙もだんだん、好奇心が海の方へ移ってっていきます。そうこうしているうちに、2人で手を繋いで波に挑むようになり、気がつけば2人ともずぶぬれで遊んでいました。