JAXAの賑わい
はやぶさなのか天の川学園都市なのか
 「最近、JAXAのあたりは『天の川学園都市』などと呼ばれているらしいよ」
 
「それはゆゆしき事態ですね。国連のゴジラ対策本部はどこへ行っちゃったんでしょう?」
 「放課後になると『仮面ライダー部』とかいうのが遊びに来てるって話でね。連中にかかると本川越の街も『風都』なんて言われちゃう上に、港まであることにされちゃうんだ」
 「そういうことなら、こっちも放課後に出かけて行って自己主張するしかないですぜ。『ケムラーの目』やりますか」

 という会話に恐れをなしたかどうかは知らないが、宇宙航空研究開発機構の展示館にはいまどきリーゼントに短ランの熱血な少年も、宇宙おたくの髪の長い少女も、怪しげなロッカーも見当たらなかった。
 しかし、昔は閑散としていた見学コースも鉄骨テント構造の展示館にまとめられ、あちこち移動しなくとも1か所で事足りるようになった。その分、団体が二組押し寄せると、館内は実に騒々しくなる。
 事業仕分けを耐え抜けるのか心配だと思っていたら、かの小惑星探査機「はやぶさ」の生還によって、相模原も筑波も一躍有名スポットになってしまったようだ。なるほどこうなってくると、何者かが仕分けの危機のどさくさに紛れて学園都市をそっくり買い上げてしまい、学園高校を作って理事長に収まっていても不思議はないかもしれない。

 「売店に行ったら、アストロスイッチなんか売っているのかな」 
 
「やー、あれはコンビニに出た瞬間売り切れるっていう話だから、ここの小さな売店じゃあひとたまりもないですよー。それより宇宙食買って帰ろう」
 
「それにしても、パワーダイザーとマシンマッシグラーの模型くらい展示してもいいじゃないかと、思わないか?」
  「でもそれって、どちらも『外宇宙技術開発機構』の持ち物だから、JAXAには貸し出さないんじゃないかなあ」

  すると「情報棟の前でフォーゼのバイクを写真撮ってる変なおじさんがいる」などという子供たちの声が耳に入ってきた。

 「ま、まさか、そんなことやってるのって?」
  「うーん・・・うちのお父さん以外にそんな人がいるとは思えないっすねー」