楽園の学園を訪ねる
シャトーカミヤ
 全国随一のイケメンぞろいな男子校とうわさの、花咲学園高校。そのキャンパスはなかなか広大で、校舎や寄宿舎のあるエリアと、球技グラウンドや陸上競技場を、隣の街の別の場所に所有している(講堂なんかは品川とか六本木とかの話もある)
 校舎は煉瓦造りの古びた建物で、正門を入るとさらに校舎のひとつをくぐって、中庭に出る。森の中のキャンパスのようだが、実は市街地の真ん中にあって、駅からも歩いて数分だ。
 校舎の昇降口に一歩踏み込むと、極力照明を落とし、日ざしも遮られたほの暗い通路に、巨大な樽がいくつも並んでいた。資料室らしき部屋には、年代物のワインボトルや蒸留機器が安置されている。どうやらこの学園は、開闢前は葡萄酒工場であったらしい・・・
 
 暮れ正月、乍らで見ていた再放送のドラマの登場人物には感心がわかなかったものの、キャンパス風景はよく知っている場所だった。初詣以外、取り立ててどこへも連れて行ってあげられなかったし、冬休みもあと1日でお開き。というわけで、イケメンパラダイスのロケ地となったシャトーカミヤに出かけた。学園は牛久市にあり、グラウンドは竜ヶ崎ニュータウン内だったり、カリフォルニアにあるはずの主人公の自宅は、実は水戸市が所在地だったりする。
 けれども現地を訪れてみると、娘らは番組のことより、ワイン工場と、郷土で作られていた葡萄酒の歴史に、興味をかきたてられる。うんうん、そうしてもらえると、連れてきた甲斐がある。
 
「だけど、あと何年かは飲めないねー」
 
「ワインゼリーくらいは買っていこうよー」
 とりあえず、お茶にしませんか? お二方。