2008年から始まっている、笠間稲荷の菊祭に添えられた行燈の演出。昨年は向日葵を使っていたのですが、ことしは200本の和傘が、稲荷商店街の至るところに配置されました。
 3日間の短い開催のなかで、薪能やお囃子なども繰り広げられ、約1ヶ月にわたる菊祭りをスポット的にイメージチェンジさせます。11月下旬の連休には、いなり寿司を素材にしたイベントや、キツネの嫁入りをモチーフとする仮装行列なども催され、小さな街興しは少しずつ勢いをつけています。
 行燈と同じように、和紙をシェイドがわりにするところは、和傘ならではのアイデア。街路灯の明かりを落とした目抜き通りには、和傘からもれる柔らかな光が足元を照らしてくれます。
 笠間稲荷の境内では、竹筒に小さな蝋燭を入れた竹提灯が無数に並べられ、菊祭りを夜でも楽しめる明かりの広場をつくり出します。
 路上のキツネ火を辿っていくと、駐車場には無造作にベニヤ板が立てられているのですが、これもまた行燈祭の一角。明かりを楽しむのではなく、影絵を作って遊ぶという逆転の発想に、ついつい自分の両手でキツネを作ってかざしてみたりするのです。
 年越しの夜や初詣の晩に比べると、訪れるお客の数は僅かなものですが、そのぶん、そぞろ歩きがしやすい。ちょっとした穴場の時間と空間を楽しむことが出来ます。
 まあちょっと肌寒い。蕎麦でもすすっていきたいなあと思うのだけれど、残念ながら蕎麦屋も暖簾を下ろして番傘の行燈に明かりを灯しているだけでした。露店で焼きそばとたこ焼きとお好み焼きと林檎飴を買い求める霰と霙は、まさしく花より団子のクチ。そんなに買い込んで食いきれるのか?