ここ数年、夏祭りの出し物が御輿と山車に加え、なぜかねぶたを繰り出すようになっています。このねぶたの行燈の半分は、地元の高等学校と中学校が絵柄作成に協力しており、霰が引退したことしから、美術部に依頼が来たのだとか。新人戦よろしく1、2年生がこれに携わり、初出展となったのでした。
一つの行燈の片側ずつを二つの学校で制作するという手法で、相手が何を描いてくるかわからない条件下、美術部ではブレーンストーミングでデザイン案を出し合い、基本路線は霙が提案した「竹取物語」が採用され、あとひとりのお友達による四季の花や山野のデザインと組み合わせて、総力戦で臨んだとか。はからずもディレクターとなった霙は、これまで扱ったこともない大きさの和紙に、仲間と共同作業で絵を仕上げていくという日々が続いていました。
実際に練り歩く行燈を見て感心したのは、ねぶたであり、行燈であるという制作条件を熟知して描かれた絵と、色彩であったこと。かぐや姫の十二単やら竹林やら窓辺の月やら、200m離れた遠目にも識別できる図柄と発色。これは美術部の顧問の先生が上手に指導した成果でしょう。現地では顧問の先生が、
「みんな熱心に取り組んでくれました。相方の学校の図柄に負けていません」
と嬉しそう。霙はねぶたを見送りながら
「せっかく描いたんだけど、お祭りが終わったら骨組みからはがされて捨てられちゃうんだよねえ」
まあ、お祭りも文化祭も、企画と準備の時間が一番楽しい。それを体験したということが、一番の収穫なのでしょう。