須賀川 松明通りの11年め
地震被害の大きな街に復興を願って
 「福島県のいわき市には、日本のエアーズロックって呼ばれている巨石があるらしいよ」
 
「それは宇宙石というのが正しい俗称・・・あれ? 正しい俗称ってどういう日本語?」
 「そういうところをお父さんが知らないはずはない。連れて行ってもらおう」
 娘等から能動的に福島県に出かけようという声が出てきたのは、内心嬉しいと同時に、どうしても福島第一原子力発電所の災害によってもたらされた放射線量のホットスポットが気がかりだ。
 宇宙石のあたりは、発電所からの距離もそこそこ離れているし、磐越道での線量測定値も高くない。しかし山をひとつ越えると、プルームによって謂れのない高線量を告知され、避難を余儀なくされた町や村もあるのだ。
 そういった災害のありさまを見せておくかどうかを考えると、彼女たちの年齢を秤にかければ望ましくない部分もある。宇宙石はほどほどに見物してもらって、別の形で震災のその後を見てもらうために、おなじみの松明通りに足を向けた。
 「建物の壊れ方は水戸よりもひどかったんだね」
 
「なんだか前に来たときよりも閑散としちゃったねえ」
 松明通りの怪獣たちは、2年前に来たときから変わっていない。変わっていないというのは、手入れをする余地がなくなっているということ。例の、いなくなってしまった2体も、まだ帰ってきた様子はない。
 須賀川市は福島県内でも地震被害の大きかった街だ。封鎖されたプラザや取り壊されたビルの敷地が、逆に街の活気を変えてしまった。これから先、ここを訪ねるとき、街の復興が進む風景を見ることが出来たら良いなと感じる。