DBA-YE21S

 3代目の登場からいつしか10年。クロスカントリー4WDはSUVへ転化し、さらにオンロード寄りのクロスオーバーと呼ばれるジャンルも産み落とされた。4代目エスクードのプラットホームとなったS-CROSS(2代目SX4)がその具現と言われる。
 自動車市場は、ジャンル別においてはこのクロスオーバータイプの需要が伸びている。しかし、4代目エスクードは大幅な乗用車化を図りつつも、SUVのカテゴリーにとどまった。エンジンの横置き化、FFベースのフルタイム四駆となっても、まだまだダートや雪道での走破性を維持しようと意地を見せている。
 しかし、初代や2代目が乗り込んでいったオフロードと、4代目が目指すオフロードとはまったく領域が異なる。ライトクロカンといえどもモーグルやキャンパーへのトライアルが可能であった初代と、4代目を同次元で比較してはいけない。
 4代目はあくまで、フラットダートやちょっとしたぬかるみ、そして凍結路での性能を発揮するものだと理解し、許容しなくてはならない。
 それでも、4WDのALLGRIPシステムを語る前に、前方衝突警報、前方衝突警報ブレーキ、前方衝突警報ブレーキアシスト、自動ブレーキなどの諸機能を「緊急時の度合いに応じて」作動させ衝突可能性の軽減策や、3段階(短:35m、中:45m、長:65m)に設定した車間距離で速度で先行車両との車間を保ち、前車不在の際は設定速度をキープするアダプティブクルーズコントロールなど、安全装備を標準搭載していることが次代の趨勢を感じる。
 意外だったことは、3代目からの思い切ったダウンサイズによって室内長が40mm、前後乗員間距離(前後の乗員のウエスト付近)は61mmも削られているのに、後部座席には比較的普通の小型車感覚で着座できることだ。後席での試乗はできていないので、長距離の疲労度や乗り心地までは保証の限りではないが、運転席の位置調節とステアリングのチルト・テレスコピック機能でアジャストできるので、もう少し後席足元のスペースも確保できそうだ。
 4代目はスペアタイヤレスの跳ね上げ式リアゲートとなった。長らくお待たせしたというべきニーズへの対応だ。だが跳ね上げなら雨に濡れないという誰が言ったか知らない幻想は、まあ信じない方がよい。
 ラゲッジスペースの容量は375ℓと、3代目より27ℓ縮小された。ここはユーザーの使い方次第なので評価の必要は感じられない。
 6速ATは、奇しくもスズキ初のメカニズム(キザシはCVTだった)。フルオート変速とマニュアルモードのセミオート変速が可能で、マニュアルモードはステアリング右奥のパドルスイッチで操作できる。慣れは必要だが、むしろオフロードや市街地走行ではフルオートの方が安全な気がする。
 市街地走行は四駆版であってもFFフィーリング(ALLGRIPがautoモードだから当然か)。だがこの大きさ、テンロクという先入観で動かすと、予想以上に軽快に走る。高速走行やダート走行でのエンジンやロードノイズは試せていないが、街乗りはなかなか静かだ。
 そういえば、リモコンキー方式も進歩しており、遂にステアリングコラムからキーシリンダーが無くなっていた。
    
 

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 ボディーサイズは4175×1775×1610mm(全長×全幅×全高)。ホイールベースは2500mm、 車両重量は2WDが1140㎏、4WDでも1210㎏と、3代目に対して400キロ軽量化している。車体は完全なモノコックとなった。
 M16A直列4気筒1.6リッターエンジンは最高出力86kW(117ps)/6000rpm、最大トルク151Nm(15.4kg)/4400rpm。燃料タンク容量は47リットルと非常に小型化された。
 カタログ上では2WDでリッター18.2km、フルタイム4WDでも17.4kmと、歴代の燃料消費率を考えれば驚異的な数字をアピールしている。
 サスペンション形式はフロントがマクファーソン式ストラット。サスペンションフレームのレイアウトやピストンロッド径を専用化し横剛性の向上を図った。ステアリングギアボックスはサスペンションフレームに直付したため、取り付け剛性を高めている。リアはトーションビーム式。
 出荷時のタイヤはコンチネンタル製コンチ・エコ・コンタクト5で215/55R17-94V(リムサイズ17×6 1/2J。PCD114.3mm)
 4WDのALLGRIPシステムは、auto、sports、snow、lockの4モードを持つ。
 autoモードは、直進加速時は100%FFのトルク配分で、スリップを検知するとフロント70:リア30にトルク配分を変更、直進に戻るとFFに回帰する。
 sportsモードは、直進加速中がフロント80:リア20のトルク配分。コーナー手前、アクセルオフ、減速中にステアリングを操作すると2WDで旋回。コーナー脱出時のアクセルオンでフロント70:リア30となり、脱出後は80:20へ回帰する。
 snowモードは、雪道などで直進路の低速走行時にFF状態で駆動し、コーナーに入る操舵を開始するとフロント60:リア40にトルク配分を変更。コーナリング中は走行状態に応じてトルク配分が調整され、直進に戻ると80:20へ回帰する。
 lockモードは、常時フロント50:リア50の直結状態を生み出し、前輪の空転を検知しLSDブレーキを(フロント70:リア30)作動させ、空転していない駆動輪にトルクの最適配分を行う。
 なお、前後輪の空転時(対角線スリップ)にはトランションコントロールが作動する。一例をあげると、右前輪と左後輪の場合、左前に50(右前0)、右後50(左後0)のトルク配分となり、脱出後は50:50に戻る。
 これらはすでにS-CROSSに搭載されたものをベースとしているが、最大の違いはトラクションコントロールの作動領域を拡張し、lockモードに入っていない場合でも、対角線上の駆動輪にスリップが生じると、ブレーキ制御によってスタック回避運動をとることができる。S-CROSSではlockモードでなければ動作しない機能だった。
 ただ、動作環境は対角駆動輪の回転差であり、右前後や左前後のスリップ時には機能しない。
 なお、四駆版ではlockモード時にヒルディセントコントロールスイッチを入れることで、急傾斜路面をブレーキサポートによって低速度降坂できる。