TD01W くろかんノマド 

 山登りのためのトランスポーターという役割を持って走り始めたノマド。
 そのコストパフォーマンスは、当時の小型四駆としては群を抜いていた。
 山を一歩一歩登る、ひたむきな精神力を穏やかな笑顔に秘めて、だいすけさんがパイロットすると、このノマドはリッター16kmを上回るツーリングスペックとなる。
 「んー、みんな踏みすぎ。速すぎですって」
 それはエスクードの特性を熟知しているからなのだが、だいすけさんは滅多なことではアクセルを開けない。淡々と一定速度で走り続ける。そのこと自体が、彼のトライアルとしての楽しみでもあるかのように。

 しかし、ウイングカップやビギナーズトライアルにエントリーした彼は、その精神力と、負けるのはいやだというガッツを拮抗させながら、どんな難関でも果敢にアタックし、表彰台に立つ。もちろんノマドもどんどん壊れていくのだけれど、無駄な壊れ方をしていない。だからトライアルの翌週にツーリングがあると、またまたリッター16kmの大台に乗せてくる。  
 「エスクードでやれることは、思いきりやりました。楽しい車だったな」
 1台のノマドで、オールラウンダーとしての性能を十二分に引き出した彼は、いったんエスクードとは異なるカテゴリーの車に移籍しているが、くろかんノマドというキーワードは色あせるることなく、エスクード仲間の語るエピソードに刻み込まれている。