TD01W ハットトリック 

 北米仕様のサイドキック・ルックを目指して、あらん限りの知識と情報を駆使して仕上げていったノマドだが、実はこのエスクード自体が、Jリーグ開幕の頃に、ブームを先取りしてリリースされた「ハットトリック」という特別仕様だった。それをまた惜しげもなくオリジナルテイストにいじっている。
 とたにさんは海外版エスクードの情報通で、小物類に至っては台湾仕様であったりヨーロッパ向けであったりと、どこからそんなものをとってくるんだというほど自由貿易商人だったが、エスクード自体のモデファイは、一貫してサイドキック・ルックにこだわりつづけてきた。
 「さすがにハンドルを左に持っていくところまではできなかったですねえ」
 そこまでやったら喝采ものか変わり者かのどちらに転ぶかわからないが、とにかく仕様変更は細部まで含めていくと、こまめに変化している。初期型のグリルから北米タイプのグリルまで、フェイスリフトだけでも二度や三度は行われた。走行性能の面でも、足まわりからLSDにいたるまで、留まるところを知らない。が、大きくシルエットを換えてしまうことには抵抗を持っていて、常にノマド・サイドキックとしてのアイデンティティーにはこだわってきた。

 現在は2代目の5ドアと、初代のバンタイプに乗り続けているが、バンは極力いじらず、2代目をやはり北米仕様に変えつつある。
 「一目見て気に入ってしまうと、その仕様に近づけていきたくて」
 車は変わっても、こだわりは変わらない。