TD01W はいどら丸 
 エスクードのオーナーズクラブ「EOS」が立ち上げられ、長く世話役を担当してきたはいどらさんのノマドは、奥方が乗っていらした青いハードトップと対照的なラジアンレッドマイカ。見た目がノーマルで、足まわりやタイヤの選択でオフロード仕様へと作り上げられているが、むしろライン取りやアクセルワークによって、その性能を引き出そうとしていた。
 以前、雨のオフロードコースのぬかるみを登っていくくろかんノマドを眺めていて、
 「えっ、あがれちゃうの? それはくやしいじゃない」
 とつぶやくのを聞いたことがあるけれど、くやしがっているだけではなくて、何度もトライを繰り返して、結局は自らも丘を制覇してしまう。くやしいというよりも、自分にもできるはず。というガッツを、ただ心に秘めておくだけでは気が済まないのだ。

 はいどら丸は、古参のエスクードの1台だったが、退役するのは意外に早かった。
 家族が増え、より家族のためにふさわしい車に成熟すること。それは大事なことで、まだまだ走れるノマドをあえてあきらめるという決意は、はいどらさんの潔さ。そして心を動かされたエピソードは、奥方の青いハードトップ・平九郎も、はいどら丸と一緒に次の愛車に道を委ねたということだった。