TD01W 初代おもちゃ箱 
 アルファベット表記が最近のスタンダードになっているけれど、「おしゃと さん」 と綴った方が、馴染みが深い。
 エスクードのクラブミーティングには古くから参加していて、見慣れてしまっている面々は、彼のノマドがやってくると顔をほころばせ、初めて目にする人は眼を丸くする。彼のノマドが前を走っていると、バルタン星人が身体を振って挨拶し、ルーフエンドからはウルトラマンとウルトラセブンがアピールする。クォーターウインドーにはスパイダーマンもよじ登ろうとしている。
 「渋滞なんかで後ろについたクルマの子供が喜んでくれるかなと思って」
 リアワイパーのバルタンは、単なる目印ではない。車体のあちこちにくくりつけられた小物たちも、笑いというよりなごみを誘うアイテムなのだ。
 まるでおもちゃ屋さんのデモカーのようだが、そうではない。
 このノマドそのものが、おもちゃ箱だ。リアハッチが開き、ルーフボックスが開くと、キャンプ道具が詰まっているのは当たり前。その中からキックボードが出てくる、バドミントン用具が出てくる。ハンモックが、ボケバイが、釣り具が、グラブが、バットが・・・
 「誰かが楽しいと思ってくれたら、僕も楽しいから」
 おしゃとさんは、いつでも静かにそこにいてくれる。彼が静かに、というよりも、彼の周りがにぎやかになっていく。14年間、育んできたアイデンティティーはノマドからMPVへと受け継がれ、ラジアンレッド・マイカのエスクードは、仲間の思い出の中に刻まれていくはず。シックなダークブルーのMPVが、追い越しざまにバルタン星人を揺らしていったら、それがおもちゃ箱二世だ。