TA01W  颱 風-X(エックス)

 週末、遠州灘の街を出て、東海道を走り抜き、一気に利根川を渡る。
 言葉で表せばたったそれだけのことを、実際にやってのけるのは、それほど気楽ではない。
 42リットルの燃料をいかに効率よく消費するか。どこからどこまでを一般道で走りきるか。渋滞に巻き込まれずに、体力を消耗せずにペースを保つタイミングは・・・
 「荒行ですんで。なに、これくらい」
 SIDEKICKさんは、プロドライバーではない。ましてやロングクルージングに適したツアラーやセダンに乗っているのでもない。
 いかに16バルブ化され、乗り心地を向上させた3型のハードトップといえど、得手不得手がある。毎週末のように、満載の支援装備を積み込んで、往復700kmの道のりを走るのに適した車とは、エスクードは言い難い部類の車だ。
 荒行という照れ隠しが一人歩きして、颱風のようなエスクードというイメージが定着した。

 彼はなぜ、そうまでして走り続けるのか。誰とはなく、そんな疑問を抱いたことがあるだろう
 「そんなこと、答えなくてもわかってるじゃないですか」
 にやりと笑いながら、彼はサムズアップした親指で、背後のエスクードを指さす。
 際だつ特徴はない、最もベーシックなハードトップ。しかしそのステアリングを握り、走り出すと、「なるほど!」と唸らせられる。
 コンパクトにして軽量、それに見合うとは言い難いけれども、素直に回るエンジン。何処かへ行きたい。何処へ行こうか。そんな気持ちにさせられる。
 彼を見入らせたエスクードは、力尽きるまで、道の向こうを目指して走り続けた。