TA01W びたぁら FIRST 

 いまだから、エピソードになる。
 当時はお互いに、ここまで同じエスクードが隣町に存在することなど、まったく知らずに過ごしていた。
 このエスクードが、あーまーどらすかるでないことは、1600ccのナローボディであることから明らか。しかしこのエスクードのキャリアとガードが、後にあーまーどらすかるを誕生させる。
 「でも、僕自身も、このパーツが“スーパーデザインコレクション”という名前だということも知らずに取り付けていましたよ」
 コムロさんは、エスクードのエクステリアをどんなふうにいじっていくかの、コーディネートに先見性があった。オートエキスポ・スーパーデザインコレクションは、それほど派手に宣伝されたパーツ類ではない。当時のエスクードのカタログに掲載されていた時期も、ごく短い。そしてこれらをフル装備させるコストや、構造変更の手間暇もバカにならない。
 それを乗り越えないと、普通のエスクードとちょっと違う、あのシルエットは完成しないのだ。
 
 彼は90年代に入ってからエスクードに乗り出した人だけれど、探求心にあふれ、車のモデファイにかけては右に出るものがないほどの実力派であることは、2台目のTD11WノマドV6、びたぁらの進化を見てもよくわかる。およそエスクードに関して、わからないことは無いと、言い切ってしまうと本人に叱られるかもしれないが、その彼が唯一知り得なかったことがあるとすれば、隣町のエスクードの存在くらいのものだ。
 彼のぐらんどびたぁらかすたむ・わいどの原点が、ヨーロピアンコーディネートを施すきっかけとなったスーパーデザインコレクションであったということは、このハードトップが、あーまーどらすかるの原点だったとも言える。らすかるにとって、ヘリーハンセンはイメージボードであり、こちらのハードトップはステップボードになってくれた1台なのである。