TA01W  ゴールドウイン’89

 「 林道を走る事が好きだったので、いつかはジムニーが欲しいなと思っていました。昭和63年、大学6年のとき、スズキから新しいコンパクト4WDが発売されました。エスクードは梯子型フレームを持ち、1600ccエンジンを縦置きにしたFRレイアウトを基本に、前輪サスペンションにマクファーソンストラットを採用し、洗練されたデザインを持っていました。大きくて平らなフロントグリルはなんとなくプジョーっぽい感じでしたし、力強いブリスターフェンダー、切り立った横開きリヤゲートの上方には、誇らしげに大きなSUZUKIの文字が付けられていました。私は4WD雑誌の特集号や紹介ビデオを買って、毎日のように見ていました」

 医学系の大学を卒業した きのじゅんさんは、それまで乗っていた赤いアルトから、買い換えを検討したものの、最有力候補のエスクードには気に入った色が無かったことがネックとなったという。平成元年の夏、初めての特別仕様車である ヘリーハンセン・リミテッドが発売され、特別色のインビエルノ・ブルーメタリックに魅かれ、販売店に行ってみたが、売り切れ。しかしそこで冬の特別仕様車として、ゴールドウイン・リミテッド が予定され、その色は赤と青になる情報を得た。ゴールドウイン・リミテッドは、白くペイントされた鉄ホイール、アクリル製のボンネットスクリーン、スノーワイパーブレード、シートヒーター、スキーキャリア、巨大なスキーバッグなどの特別装備を有していた。

 「とにかく鮮やかなミディアム・レッドの車体色がとても気に入り、即刻購入決定しました。本当に楽しい車でした。林道、河原、砂浜 (もちろん立ち入り禁止の所では無いですよ)、トライアルコースなど。こんな所を走れるのかと思うところでも、走りました。全長が3.56mと短いので、行き止まりでの切り返しも道幅が4m強あれば可能で、長いバック走行をしなくて良いのも助かりました。静岡の山中の道路は殆ど走り、山梨県や長野県へ抜ける林道へも何度も出かけました」

 「10連装のCDチェンジャーが5周するぐらいの長距離ドライブにも出かけました」

 きのじゅんさんの現在の愛車は、プジョー307だが、歴代の愛車の中で最も行動範囲が広かったのがエスクードだそうだ。下北半島をはじめ、新潟や山形、秋田へも出かけ、鳥海山麓の林道を走破。西は広島までカバーした。10枚のCDが5回の演奏を終える。本当に好きな車との時間の共有は、そんなエピソードを残してくれるのだ。