月軌道へ。そして折り返し
384400kmを刻む
 1971年7月30日。アポロ15号が月着陸を果たした。このときのミッションは、初の月面用ビークル運用を含め、地質調査など長期滞在を目的としていた。
 その日からきっかり40年めの2011年7月30日16時少し前(時差のことはこの際気にしないこと)、kawaさんのTD11W、νおたふく弾丸ノマドが、とうとう月軌道に到達した

 KawaさんがESCLEVやなどのツーリングイベントに現れたのは、2003年のこと。TD11Wゴールドウインはきわめてノーマル仕様に近く、13万キロを刻んでいたが、彼はこのノマドを新車登録したときに、それまで乗っていたTD01Wのノマドを8万キロ台で手放していた。つまりこの時点ですでに、エスクード歴はトータル21万キロのレコード保持者だった。2台めのノマドは次第にノーマル規格から外れ、本人曰く「車高が上がったり下がったり、用途に応じてめまぐるしく変化」している。
 ときには林道、オフロードコースでクロスカントリーをしていたかと思えば、その翌月には富士スピードウエイで田嶋さんのマシンに絡んでいるというマルチパーパスぶり。かなり非凡なパーソナリティーを持っている。
 足回りを多面的にいじり、走らせ方の好みに合わせて(というだけのことではなさそうだが)トレッドをワイド化させ、エンジンはただ載せ替えたのではなく燃焼室やシリンダー内の加工を施すほどの入れ込みぶり。それらは、並々ならぬ覚悟をもってのモデファイ。
 この弾丸仕様のエスクードは、競技車両でもショップのデモカーでもない。ただひたすら、ドライバーが走りたいところに走っていける、ドライバーの走らせやすさに特化した個体。それはドライバーにとっても車にとっても、本望としか言いようのない蜜月の体現だろう。

 クロスカントリーとしての限界の低さ、ユーティリティの中途半端さ(これはどんな車にも際限なく求められるからどうでもいいけど)、生まれの血統など、どう切り込んでも秀でたところがなかなか見いだせないエスクード。と、そこまで卑屈になる必要はないが、何か一つくらい、秀でそうなところを見てみたい。そんな思いを、彼もまた抱え続けていた一人だ。
 月軌道には届いた。ここからどこまで走るのか。ゆったりと地球への帰還コースに乗ったノマドの旅はまだまだ続く。
 

   
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