2015年10月15日、エスクードの4代目モデルがデビューしました。すでに海外ではVITARAの名前で販売されているモデルの国内投入という方式。FFの2WDが「DBA−YD21S」、ALLGRIPシステムを搭載した4WDが「DBA−YE21S」となります。
 搭載エンジンはレギュラーガソリン仕様のM16水冷直列4気筒、変速機構は6速ATのみ。3代目に対して大幅なダウンサイジングを敢行し、全高と全幅以外は初代(というよりむしろ2代目2000モデル)に回帰しています。
 このモデルが2代目SX4「S-CROSS」をベースにしていることは周知の事実ですが、海外でも国内でも4代目としてエスクードの系譜が与えられました。
 それはなぜか。折を見て探求していきます。

2WD:DBA-YD21S
4WD:DBA-YE21S

 
 新型 エスクードのボディーサイズは4175×1775×1610mm(全長×全幅×全高)。ホイールベースは2500mm、車重1210kg。歴代モデル最終型(3代目は現行モデル)とのディメンション比較は以下を参照。
 E-TD51W   4200×1695×1720mm
 LA-TL52W  4090×1780×1685mm
 CBA-TDA4W 4300×1810×1695mm
 M16A直列4気筒1.6リッターエンジンは最高出力86kW(117ps)/6000rpm、最大トルク151Nm(15.4kg)/4400rpm。ピストンリングの張力低減、ピストン・コンロッドの軽量化、ベアリングの細幅化、クランクシャフトの細軸化により、フリクションのロス軽減を図っている。また、エンジンマウントにペンデュラム方式を採用し振動を低減させ、トルクロッドは樹脂製として軽量化に貢献している。
 燃料タンク容量は47リットルと非常に小型化された。
 カタログ上では2WDでリッター18.2km、フルタイム4WDでも17.4kmと、歴代の燃料消費率を考えれば驚異的な数字をアピールしている。四駆の実燃費がリッター12〜14程度だとして、初代のコンバーチブル並みの数字が期待できる。
 車両重量は2WDが1140s、4WDでも1210sと、3代目に対して49馬力下げて400キロ軽量化している。車体は完全なモノコックとなった。
 サスペンション形式はフロントがマクファーソン式ストラット。サスペンションフレームのレイアウトやピストンロッド径を専用化し横剛性の向上を図った。ステアリングギアボックスはサスペンションフレームに直付したため、取り付け剛性を高めている。リアはトーションビーム式。
 出荷時のタイヤはコンチネンタル製エコ・コンタクト5で215/55R17-94V(リムサイズ17×6 1/2J。PCD114.3mm)
 4WDのALLGRIPシステムは、
auto、sports、snow、lockの4モードを持つ。
 
autoモードは、直進加速時は100%FFのトルク配分で、スリップを検知するとフロント70:リア30にトルク配分を変更、直進に戻るとFFに回帰する。
 
sportsモードは、直進加速中がフロント80:リア20のトルク配分。コーナー手前、アクセルオフ、減速中にステアリングを操作すると2WDで旋回。コーナー脱出時のアクセルオンでフロント70:リア30となり、脱出後は80:20へ回帰する。
 
snowモードは、雪道などで直進路の低速走行時にFF状態で駆動し、コーナーに入る操舵を開始するとフロント60:リア40にトルク配分を変更。コーナリング中は走行状態に応じてトルク配分が調整され、直進に戻ると80:20へ回帰する。
 
lockモードは、常時フロント50:リア50の直結状態を生み出し、前輪の空転を検知しLSDブレーキを(フロント70:リア30)作動させ、空転していない駆動輪にトルクの最適配分を行う。
 なお、前後輪の空転時(対角線スリップ)にはトランションコントロールが作動する。一例をあげると、右前輪と左後輪の場合、左前に50(右前0)、右後50(左後0)のトルク配分となり、脱出後は50:50に戻る。
 これらはすでにS-CROSSに搭載されたものをベースとしているが、最大の違いはトラクションコントロールの作動領域を拡張し、l
ockモードに入っていない場合でも、対角線上の駆動輪にスリップが生じると、ブレーキ制御によってスタック回避運動をとることができる。S-CROSSではlockモードでなければ動作しない機能だった。
 ただ、動作環境は対角駆動輪の回転差であり、右前後や左前後のスリップ時には機能しない。
 なお、四駆版ではlockモード時にヒルディセントコントロールスイッチを入れることで、急傾斜路面をブレーキサポートによって低速度降坂できる。


 プラットホームが前モデルと異なるのに、エスクードなのか?
 エンジンの縦置きが理想的四駆のあり方ではなかったのか?

 新型エスクードは、歴代モデルとの系統の違いを指摘されることだろう。しかしそれで切り捨てることは早計過ぎる。
 S-CROSSのクロスオーバーというカテゴリーと、エスクードのSUVカテゴリーには、ALLGRIPのプログラムに幅を持たせたところに違いがあり、多少の悪路でも走行性能を維持できることにある。
 ただし、ここをはき違えてはならない。新型に与えられたオフロード性能と、3代目以前がこなしてきたそれとは、ステージが根本的に異なるのであって、初代モデルに回帰したからと言って、初代のオフロード性能そのままを比較対象にしてはならない。
 4代目は時代が求めたニーズ(主に燃費や環境基準)に応え、最大限の工夫を凝らしている。これを受け止め、新型ならではの良いところを見出していきたい。
 

              取材協力 WESTWIN
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