Evaluation 
We are deeply in the ESCUDO.
快適ではないことの楽しさ
1992年式 TA01R(3型)

はまたにさん


 1992年の春、私は親父のセダン(三菱・FFギャランシグマ)を共用していたが、これを買い換えるという話から、初の愛車選びとなった。
 当時とにかくオープン車が欲しく、できれば4WDがいいなーと思っていたので、三菱・パジェロJトップ、スズキ・エスクード、ダイハツ・ロッキー、なぜかユーノス・ロードスター・・・を購入候補に挙げてはみたが、Jトップは少々私にはお高く、ロッキーは今イチ五感に訴えるものがなく、ロードスターは流行っていたし4WDではないし・・・と、ルノーあたりのフランス車っぽい(←すでにお馬鹿)、小さいながら四隅にバシッと張り出したブリスターフェンダーが冴えてたエスクードに決定。

 1992年当時、日本のクルマ市場は、今と全く異なっていた。SUVというジャンルは無く、4WDといえば三菱ジープ・パジェロ、スズキジムニー、トヨタランクル80&70、日産サファリといったヘビーデューティな車ばかりで、その中でスズキはニッチ市場を狙ったというのが定説だが、確かにこういったコンパクトで泥臭くない4駆は、無かったのだ。
 2008年の今、初代はすでに、ちょっとしたオールド・カーの仲間入りをしているのだろう。昔、私がルノー4辺りの実車を見て思ったように、今の時代から見れば、ボディサイズの小ささや内装の安っぽさ、閉める時の薄いドアの音に、「すごいな。こんなのよく乗ってるな」と思うのが当たり前だろう。

 ましてや、我がエスクード・コンバーチブルは、手動の幌付きである。夏は暑く、冬は寒い。手を汚して幌をあけ、トンネルの中や渋滞で排気ガスの匂いに顔をしかめ、突然の雨に慌てたり濡れたりする。幌をつけないで走るのは、外から見れば良いものの、乗ってて良いのはせいぜい60Km/h迄である。荷物が飛んで行きそうな気もするし、何より風の巻き込みがものすごいためだ。(笑)

 登場から約20年を経て、エスクードはライトクロカンからSUVになった。
 言い換えれば、「カジュアルなTシャツとブルージーンズから、フォーマルなジャケットになった」とか「コーラからバーボンになった」、そんな感じなのである。テントを積んで、えっちらおっちらと小さなエンジンをぶん回して県道走って野営に行くのではなく、予約したコテージに高速道路を静かに疾走し、空調の効いた部屋の窓の内側から外を見て「自然はいいねえ」と言う。そういうクルマになったという事なのかもしれない。

 けれど、少なくとも私には、こいつが一番、ちょうどいい。大は小を兼ねないのだ。
こいつはどこへでも行ける。こいつは一生懸命、走ってくれる。快適ではないが、楽しい。安楽ではないが、退屈しない。町のカレー屋さんの匂いも、今日の空の色も、雨上がりの山の葉っぱの匂いも、太陽の位置も、海の潮風も、こいつはそれをそのままに、感じさせてくれる。 
   

   

Egress