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初代モデルの到達点 1996年式 TD61W 嵐田雷蔵 |
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L4−2000cc、ディーゼルモデルを3ドア、5ドアともに経験していないため、初代モデルのどの位置に2500ccがあるのか、的確に述べることができないのですが、同一の車体として比較した場合、集大成はL4−2000ccのTD51Wにあり、異端の域にいるのがTD61Wなのではないかと感じています。 TD61WのV6−2500ccは、スズキが初めて小型車枠を乗り越えた車づくりを具体化させるテストベッドであり、TD62W、TX92Wを経てTD94Wへ進化していくきっかけとも言えるでしょう。 もちろん、その素地は、V6−2000ccの11系モデルから発していますが、V6エンジンが小排気量のまま長寿命化していくことは、エスクードの進化の上では困難だったようです。回せば楽しい2000ccモデルとはいえ、タイヤを大径化したりオールテレーン化していくことで、どうしてもトルクの薄さに負担をかけていきました。 2500ccでは、その負荷を軽減させてくれる余裕があるうえ、肥大化したといっても1360kgという車重は、昨今の自動車との比較では、まだまだ軽い方に収まっているでしょう。 足まわりやタイヤに手を入れないノーマル仕様であれば、風評に聞いていた燃費の悪さは感じられませんでした。4速ATのみのこのV6の性格は“おっとり型”。ツインカムだからといって、軽快に吹け上がるエンジンではありません。ATをパワーモードに設定し、意識して踏み込まなければ、高回転まで良く回るとは言えません。 その分、余裕の出た低中速域で巡航するのはV6−2000ccよりも楽になり、ノーマル仕様で乗り出したときにはリッター11kmの後半が出ていました。タイヤ径を225/70R16(従前は215/65R16ラジアル)に換え、オールテレーンとした現在は、リッター10kmか、それをわずかに下回るところで落ち着いています。 初代の集大成であるTD51Wとの違いは、このエンジン形式だけ。実は同じ足まわりや駆動系を組み込んだフレームには、TD51Wと共通のボディが載せられているわけです。屁理屈を言えば、集大成の上に異端が成り立っている。こういう遊び感覚の解釈が、TD61Wを所有するにあたっての“見栄っ張り”です。 ディメンションは小型車。しかし税制上は普通自動車。2代目後期型や3代目前期のXE、XG、XCとは真逆の3ナンバーは、この当時のエスクードという車格で考えると、なにもわざわざエスクードでなくとも・・・ そう思うのが自然でしょう。 しかしこれをさらに逆転させると、ランニングコストを別にすれば、1600ccノマドのトレッドを少し拡大しただけの車体に、安定したトルクとそこそこのパワーを与えた、初代の到達点なのです。 ユーザーは本当は、このようなモデルを望んでいたのではないでしょうか。仮にこのコンセプトで“TA61W”などというものが存在していたら、なかなかのホットモデルに成り得たと考えられます。 5ドアのホイルベースだと、ホットとまでは行かないですが、長距離ツアラーとしては及第点。シートがどうのこうのと言いだしたらきりがないですが、ショートモデルと比べたら、疲労度は軽減されます。なによりへんてこな異音など発生しないところは、この車体の立て付けの割にはまともです。 V6エンジンの立ち上がりは、オフロードコースの各セクションでは、エスクード比でピーキーな(あくまでエスクード比)2000ccモデルよりも、若干の低速トルクが増えている分、扱いやすくなっています。 といっても、ロードクリアランスはTD51W、TD61Wともに200mmを下回っています。 各アングルの数値も平凡ですから、ノーマル仕様でのオフロードセクションは、必ずしも得意ではありません。ランプブレークオーバーアングルは特に、ホイルベースが長い分、ノーマルでは林道レベルの大きな凸凹に干渉するし、モーグル地形ではサイドシルをヒットします。 この世代のエスクードには、51W、61W用フロントエクステンション(バンパーガード、別パーツでスキッドプレートもどき)と、これに対応した補助灯があります。見た目はスマートで、この位地の補助灯照射範囲も悪くありませんが、下り側でのアプローチアングルを大幅にスポイルします。 また、リアバンパー内側には燃料タンクがむき出しでつり下げられており、ノーマルではプロペラシャフトやリアデフ以上のウイークポイントとなり、リアサスを延長していても、乗り越えセクション脱出時の縮み側ではデパーチャーアングルにリスクが残ります。 最低限(同時に推奨する最大値)2インチの地上最低高アップ、タイヤの種別や規格変更(銘柄、サイズにはそれぞれの好みがあるので明記しません)、前後下回りのガード類は必要です。当然、これらの対応策を施せば、重量増加やタイヤの大径化と抵抗値増などで燃費を下げ、車高が上がることによってロールの増加、プロペラシャフトやドライブシャフトへの負荷増などで、CVジョイントなどの破損というケースも視野に入れなくてはなりません。 TD61Wのメンテナンスは、他の2000ccガソリンエンジンのエスクードと変わるところはありません。月単位の走行距離や、走らせ方で、消耗品の交換サイクルは変動しますが、排気量の大きさに神経を使うことはないでしょう。各部油脂類の消費量も、大差はありません。 ただし、6気筒というエンジンは、シリンダーごとの各部品が、直4よりも多数にわたる。修理やオーバーホールの際にこれらを交換していくと、決定的に直4のコストを超えていきます。 紹介しているTD61Wの個体では、20万キロ前後でエンジンの補機類に故障が発生しました。 累計的に燃料ポンプ、ダイレクトイグニッションは15万キロ以降、故障発生率の筆頭とみていいかもしれません。オープンデフに関してはまだ異常は出ていませんが、TA11Wの経験では30万キロ前後が寿命でした(ただし使用度合いによる差はあるでしょう)。驚くべきは、トルクコンバータも、70万キロに差しかかった2018年春現在、ただの一度も故障していないことです。 問題は、そこまで走らせるユーザーさんが居るかどうかですが、二次ユーザー以降には、これらの故障発生確率が高まっていくことになります。 |
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