Evolution 歴代モデルの総論として
We are deeply in the ESCUDO.

 1988−1997

 約9年半にわたる初代モデルの変遷は、細かく割ると枚挙にいとまがない。概略は本サイトのescudo historyと、本企画のEvaluationを参照いただくとして、1600cc6車種(レジントップ、X−90含む)、2000cc6車種(ディーゼルターボ含む)、2500cc1車種に及ぶ幅広い進化を遂げてきた。
 クロスカントリー4WDという基本性能を苗床に、シティユースにもとけ込むことのできる洒落たデザインをミックスする発想は、無骨さとシンプルさを纏ったそれまでの四駆からみれば軟派に見えたし、その基本性能はあくまで基本であり、他を凌駕するものはなかった。しかしエンジンや足まわりなどをみていくと、意外なほどに斬新さやユニークさを備えている(各項目は他項にゆずる)
 1990年代に入ってからのこととなる、SUVではなく「RVブーム」と呼ばれた当時、このジャンルの自動車に関してユーザーの底辺を広げた1台であることは、“ライトクロカン市場”が白熱したことでも明らかだろう。二次、三次ユーザーを交えながらも、今なお初代モデルを新車登録時から乗り続けているユーザーが多く存在する。
 マイクロ4WDを誇るジムニーは、マイクロさの中の高性能走破性こそが最大の魅力だが、小型車枠では1300ccまでが、それを許容するコンパクトサイズ(2008年時点)。エスクードは、ジムニーの禁じ手とも言うべき1600ccクラス以上のユーティリティやスタミナといった、殻を破る可能性を託されていた。『おとなの愉快は、そこからはじまる』というキーワードと共に。
  
 1997−2005

 『Earth Touring 4×4』として登場し、『クロスカントリーセダン』へと名乗りを変えた。唐突に名付けられた2代目モデルの枕詞に、戸惑わなかったと言えばウソになる。今思えば、浸透してきたSUVというジャンルにマッチした各社のライバルが台頭するなか、“ただのSUV”ではないのと、ひねりを利かせたメッセージだったのかもしれない。
 2500ccにまでクラスアップしながら、室内寸で言えば1600ccクラスと変わらなかった初代に比べ、僅かな拡大でありながら、2代目は明らかに横方向にゆとりが生まれている。後に追加されるグランドエスクードは、『クロスカントリーワゴン』として、3列シートやそれをたたんだ状態のカーゴルームを強くアピールした。これらは全て、初代モデルでリクエストされ続けてきた、「狭い、荷物が積めない」というユーザー評価に応えてのことだった。
 北米市場を主力マーケットに見据えたと言われる2代目は、コンセプトスケッチのスタイルを見ても、決してキープコンセプトではない。「ヒットした先代を引き継ぐモデルはプレッシャーを背負う」「得てして2代目は当たらない」と揶揄されるのが自動車の世界だが、エスクードも結果としては例外ではなかった。
 ところが、スケッチを見て感じることは、先代のプレッシャーどころか、再び殻を破ろうとするアクティブな冒険心にあふれている。このシルエットのまま登場していたら、2代目の評価は全く違っていたのではないだろうか。北米を意識していたというより、国内を意識しての結果こそが、実際にラインアウトした2代目のカタチであったようにさえ思える。
 そして2000年代の総括的なマーケットが、新しいコンセプトの自動車を生み出す潮流に切り替わっていくことが、2代目の苦戦の背景でもある。そこを約7年間乗り切ったことが、3代目を存続させる何よりの底力であったことは、何よりの貢献度。実力は折り紙付きのモデルなのだ。
 2005−200X

 突き放してしまえば、「エスクードという名前を継承した、別の車」。しかしそのことを口には出さない許容量を持つ者と、その反対の意見を唱える者。そして、この世代に進化したからスズキに乗ってみたという者。3代目エスクードを取り巻く市場は、更なる底辺の拡大によって混沌としている。
 『ネイチャーマシーン』という言葉からも、このエスクードのコンセプトは、ユーザー側から見れば、どちらかといえば曖昧なのだが、その進化の内容は極めてはっきりとしている。ビルトインフレームとは言ってもモノコック化され、四輪とも独立懸架の足まわりに変更され、ローレンジがあるだけのただの直結四駆ではない。しかも電子制御の走行支援デバイスまで搭載しているほど、2代目以前とは比べものにならない意欲作となった。ネイチャーと言うよりは、むしろサイバー。唯一、リファインされながら搭載されているエンジンに、血脈が残されている。
 これが本格的にSUVの土俵に乗った、3代目の姿。それに対する評価もまた混沌としているが、車としてのランクが上がれば、評価の厳しさも格上げされるようで、手にしたユーザーからは立て付けや質感に対するクレームが大きく、エスクードとは縁のない層からは、なんとなくやっかみのような声が投げかけられている。そして再び海外主力の世界戦略車という側面から、国内でのアピール度は地味な方である。
 その3代目も、いよいよ後期型への進化を遂げる時期。四駆としての基本性能を維持しつつ、SUVというよりもオールラウンダーとして成熟を促される。この意味でのベクトルは変わらないものだが、ユーザーの声は20年前とは変わりつつある。ユーザーやファンを待っているのは乖離か、それともより強い愛着か。答えはまだ未知数だ。

Egress