Evolution 3代目エスクードのサスペンションシステム |
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初代からのフルフレーム構造を捨て、ビルトインフレーム構造のモノコックボディに生まれ変わったが、ボディサイズも従来比2回り大きくなり、もはや「ライトクロカン」とは言えなくなった。
4WDシステムもパートタイムからセンターデフ式フルタイムへと変更になった。
さて、3代目のサスペンションであるが、フロントはストラット式ではあるが新設計となり、コイルスプリングが別置きから同軸(オフセット)タイプとなった。
リアは独立懸架のマルチリンク式へと変更となっている。サスペンション形式だけ見ると4輪独立懸架となり、まったくの乗用車の足回りになってしまった。
もっとも、メーカー自ら「SUV」と言い切ってるぐらいだから。。。
マルチリンクの採用は、2代目で構造変更した時の様に乗り心地・操安性の向上が主目的であろう。
マルチリンクは、サスペンションコンプライアンスの最適化やジオメトリ変化の抑止と一般的には言われるが、要はタイヤ・サスへの入力・ストロークによって生じるアライメント(キャンバー・トゥ)変化を極力無くし、きちんとタイヤを接地させようというものであるため、ある意味クロカン走行には向かないサスペンションなのである。
その他デメリットとしては構造が複雑でコスト的に割高である。
そのようなサスペンションを持ちながら、最低地上高は200mmを確保しているが、これは従来より大径のタイヤへ変更した結果であろう。
アプローチアングル、デパーチャアングルとも30°を切り歴代比小さくなっているが、前後のオーバーハングの短さでこれを補っている。ただ、リアナンバープレートの取り付けには疑問を抱く。
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前、マクファーソンストラット式だが、コイルが同軸に
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リアサスは独立懸架マルチリンク式に
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3代目も歴代と同じようにオフロード性能を考察してみる。
ボディから全くの新設計になってしまったので歴代との単純な比較はできないが、前述したとおりメーカーの言うオフロード性能を本当に持ち合わせているのか?と疑問を抱いてしまうサスである。
しかし、実際にオフロードへ乗り出してみると、意外なほど走れてしまうのである。
3代目のホイールストロークは、フロント125・リア90mmある。フロントはストラットのストロークを従来比10mm延ばし最低限のストロークを確保しているが、リアはマルチリンクである以上ホイールの上下動の制約が出てしまうため、歴代で一番短い。ショックアブソーバーのストロークは伸びているのだが(従来比+20mm)。
歴代がノーマルで軽くクリアできるモーグルにおいて、この足の短さが災いして容易くタイヤが浮き上がり対角スタックを起こしそうになる。しかし、3代目はそのままアクセルを踏み続ける限り、タイヤが浮こうがクリアしてしまうのである。
その秘密はサスペンションよりも駆動システムにある。
3代目に採用されたフルタイムシステムはセンターデフ付きではあるが、普通のセンターデフではない。
普通のセンターデフは、前後の回転差を吸収しタイトコーナーブレーキング現象を起こしにくくするのが目的であるが、前出のモーグルの例のように車輪が1輪でも浮き空転すると他の車輪には駆動力が伝わらず、動けなくなってしまうのである。
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この状態を回避するのに通常は前後どちらかのデフにLSDを組み込むが、3代目はセンターデフにカム式のLSDを組み込んであるため、前述のように片輪が浮こうが前に進めるのである。
ちなみにこの機能はDaimler Chrysler AGの商標登録であるESP(Electronic
Stability Program)と混同されがちであるが、全くの別物である。
ESPはエンジンの出力制御(主としてトランクションコントロール)、アンダーステア、オーバーステア制御を電子制御し走行中の車両の挙動を安定化する物である。
ノーマルでもそこそこの悪路走破性を見せてしまう3代目だが、やはり足は延ばしたい。いくら優秀な機能を持ち合わせていても、お腹がつかえて亀になってしまっては元も子もないのだから。
車高UPへのアプローチは歴代と同じで、タイヤの大径化からコイルスプリングによる車高UPがセオリーであろう。
なおタイヤ変更時、ノーマル17inchの場合は16inch化と70以上の扁平率の変更をお勧めする。
バネ下重量を軽くすることにより3代目特有の突き上げ感は、多少であるが緩和される。
フロントのストラット構造は歴代の項でも挙げた通り、車高を変化させるには向かない構造である。
3代目よりコイルスプリングがストラットと同軸となったため、車高の変化はストラットへの負担が大きい。
新採用のマルチリンクもまた同じ。
3代目で採用しているマルチリンクは比較的オーソドックスなアームレイアウトであるが、それらをマウントするサブフレームの幅を広くしてあるため、アッパー、ロアの各アームが比較的短い(これはバネ下重量の軽減の目的もあると思われる)
このアームが長く取ってあれば、そこそこの車高UPが可能であったかもしれないが、現状のレイアウトでは伸び切りまでのストロークの余裕をみても1〜1.5inchUPが限度であろう。
現在3代目用のUPコイルは数社から発売されているが、長いもので40mm止まりであり、各社ともそこが限界と見ているのであろう。
更に上げようと思えば、海外にはあるらしいが初代にあったショック延長KITで上げることはできそうである。
しかし、フロントはそれで上がったとしても問題はリアである。
リアもコイルスペーサ(海外製にあり)で上げることは可能であるが、そうした場合、ネガティブキャンバーになってしまう可能性がある。
ロアアームのボディ側取り付けは、カムボルトを使用しているので少々の補正は可能と思われるが、補正しきれない場合はロアアームを延長しなければならない。
当然、現在そのような物は発売されていないし、今後も出てはこないであろう。
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以上のように3代目は歴代の中で一番チューニングの幅が狭い車である。
それを補うかのような4WDシステムとESPであるが、オフロード走行中にドライブシャフト破損という懸念があるだけに、信頼しきることも一抹の不安がある。
やはり3代目は「SUV」らしく、ハードなクロカンはしない方が無難なのかもしれない。
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written by aki. |
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※参考文献※
(株)ニューズ出版 ハイパーレブVol.53 スズキ・エスクード
(株)三栄書房 モーターファン別冊第358弾 新型エスクードのすべて
(株)山海堂 自動車のサスペンション Automotive Suspension |
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