エスクードとはかつてスペインとスペイン語圏の中南米諸国とポルトガルで使用されていた通貨単位である。古スペイン金貨のイメージや、その大航海時代というロマンや冒険心をイメージして名付けられた。
車名の由来においてこの説明間違っていないが、「通貨単位」と言い切ってしまうのはいささか乱暴。いわば強引な繋げ方でもある。
言葉の由来をもう少し紐解くと、エスクード(ESCUDO)が「楯」あるいは「盾」を意味するスペイン語圏の言葉だということがわかる。そこから通貨単位に流れていくには、中世ヨーロッパ以前から楯に描かれた紋章との繋がりがあるだろう。この紋章をエスカッシャンと呼び、それを持つ者の家系や領地、階層をも表していた。
エスクードという単語には、通貨単位と古スペイン金貨以上の深みがあるということだ。
そこで、どうせ強引にこじつけるなら、楯があるなら「剣」もあるだろう。という着眼で、同様にスペイン語で表すとエスパーダ(ESPADA)。その昔、といっても50年前から40年前にかけて、その名を冠した自動車を、ランボルギーニが作っていた。
ランボルギーニ・ミウラに搭載されたV12気筒4000ccという「いかにも」なエンジンを共有しつつ、4シーターのグランツーリスモ。この車のデザインは、マルチェロ・ガンディーニによるものだ。
別項「エスクード誕生物語」に記されている通り、ガンディーニはカーデザイナー羨望の的ともいうべき巨匠。でもワゴンRにも乗っているという、スズキとはビジネスライクなばかりか、市販はされなかったがエスクードのレジントップのキャノピーを最初に手がけた人物だ(市販されたレジントップのキャノピーはハンス・ムートのデザイン)
初代エスクードには「スーパーデザインコレクション」と称する専用ドレスアップパーツが存在し、89年夏から発売された。
文字通り、初代エスクードにしか装備できない非汎用のグリルガードやルーフキャリアシステム群である。これらもガンディーニ作のキャノピーと同時に登場していることから、何らかの関連性があるはずだ。
奇しくもエスクードはエスパーダが生産中止された10年後に誕生するうえ、エスパーダ自体が日本国内でどれほど現存しているかもわからない。それ以前に「剣と楯」などという発想で取り扱おうとした車雑誌もなかった。
カタオカデザインのエスクードとガンディーニ作のエスパーダ。そのシルエットは対極であり、それぞれその名をよく表しているように感じられる。そして薄皮一枚、髪の毛一本の細さで、盾と剣には不思議な縁が結び付けられている
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