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一寸先は「霧」
聖地・剣山スーパー林道へ

天気も大荒れなら林道も大荒れ 


 今回走行するのは、林道の聖地とも呼ばれている四国の剣山スーパー林道。
集まったメンバーの中でスーパー林道の走行経験者が私だけという、ある意味重要なポジションだったがその経験値が一切役に立たなかったのです。

 集合場所では気持ちの良い晴天を迎えてました。続々と集まってきたメンバーは早くも地図広げてルートの確認。私以外のみんなは初めてのスーパー林道に気分は高鳴ります。
 集まったエスクードは3代目が2台、4代目が3台、と新型が一気に3台林道に入るという貴重なイベントとなります。
 気になるそれぞれのタイヤは、3代目の2台はMTとATという林道走行に適した装備。
 4代目はノーマルも含めて3台共にオンロード。現時点で知る限り純正サイズでのMTやATが販売されていないのが主な要因かもしれません。
 それでもボディへの影響を考えて幅と外径の近いATならばあるのですが、16インチに落とさないといけないという、別途ホイールも必要になるのもATに履き替えない一因とも言えるだろう。

 皆さん意気揚々と出発。が、標高が上がるにつれどんどん雲行きが怪しくなってきたではありませんか。今回は林道途中に合流する支線から入ったこと、終点の高知県側手前数kmが通行止めになっていたことから、走行自体は短くなりました。
 といってもそこはスーパー林道、それでも50kmは走ることになります。その林道と合流するポイントではまだ曇り空程度でしたが、先へ進むにつれてどんどん霧が濃くなっていきます。
 普段、霧がなければオーバースピードになりがちなこの林道ですが、その不安以上の濃霧。おのずとノロノロ運転になっていきます。

 「こちら最後尾、先頭応答お願いします。」

 「こちら先頭、どうぞ。」

 「後ろから車両一台、バイク複数台。停止お願いします。」

 後ろからは慣れた運転のオフロードバイクや地元車両が連なるので、安全な場所で一旦停止して追い越してもらうことに。
 最後尾車両から先頭車両への無線ではこんなやり取りがひっきりなしです。
無線は2台しかなかったのですが、他の車両も無線を検知できるレーダー探知機を搭載しており、その警告が鳴れば停止の合図が分かるという、山奥では一見関係ないと思われる製品が意外なところでその機能を発揮してました。

 「景色は写らなくてもいいからみんなの顔が写ってますかー?」

 「良い感じで見えませーん!モザイク処理の手間が省けまーす!」

 「喜んでる場合じゃないでしょー!カメラずぶ濡れですよー!」

 絶景が見渡せる林道の撮影スポット、「徳島のヘソ」でも絶景どころか皆さんの表情も霧とレンズに付いた雨粒でよく見えません(笑)


 時間が経てば天候が収まるのを期待して先へ進み、昼食の頃合いを図りますが、一向に収まる気配を見せなかったこの悪天候。昼食できるスペースを見つけ、雨風の中、やむを得なく休憩。せっかく持参した簡易コンロも傘のお世話になることに。
 しかし、その傘も気休めに過ぎないほど風が強く、横殴りの雨が襲います。標高に加え、風と雨で冷え切った体と心に、カップ麺とコーヒーがとても染み渡ります。
 温まった後はもちろんと言わんばかりのエスクード談義。

 「MTでも滑る感じはありますねー。」

 「ATは良い感じでしたよ。」

 「空気圧もう少し下げれば良かった。」

 話題はタイヤばかりではありません。

 「4代目のパーツ、未だに少ないですねー。」

 「中華製なら結構ありますよ。」

 「JAOS、もう少し頑張ってパーツを出してくれないですかねー。」

 新型が3台も集まればこの話題が必然と生まれます。

 「それでも3代目がオンもオフも一番バランスが取れてて良い感じですよね。」

 と、3代目の車両としての仕上がりに納得の様子。この談義の時間だけは悪天候のことを忘れているようでした。
 先が長いこともあり、談義はそこそこに林道走行を再開すると皆さん現実に引き戻されます。

 「どこがフラットなダートばかりなんですかー!滅茶苦茶荒れてるじゃないですか!」

 「そうだそうだ!私なんてずっと”LOCK”モードで走ってますよ!」

 「いや、その、数年前は・・・」

 「そんな昔の話なんていいです!それよりこの霧なんとかならんものかー!」

 いや、本当に数年前はフラットで走りやすい林道だったのです。もちろん私もこの新型でスーパー林道を走るのは初めてで、今回は結構車両が揺れるなぁという印象でした。
 以前乗っていたグランドエスクードがフレームで足回り一式交換してて、タイヤがATだったからなのか? グランドで走っていた頃はこんなにも揺れる感じではなかったことは確かな記憶としてあります。
 今となってはその頃の揺れがどのくらいの大きさだったのか、細かいことは忘れていますが、それでも山肌はこんなに崩れてなかったぞ、と思った次第でした。
 そこは昨今のゲリラ豪雨など自然現象が大きく関与しているのかもしれません。平野と山頂で天候が大きく違っていたように何が起こるか分かりません。


 林道走行も終盤に差し掛かろうとした時、10台前後のオフロードバイクの方たちがバイクを降りて道の真ん中に集まっていました。
 その中の一人の方がバイクで転倒、足がそのバイクにの下敷きになり骨折したらしいというのです。出血こそないようですが、かなり痛そうにしてます。
 救急車を呼んだというのですが、ここは同じ景色が続く林道。詳しい場所など伝え切れてません。
後に救急車から折り返しの電話があるそうなのですが、山奥で電波状況も最悪。
 とにかく電波が安定する県道付近まで怪我された方をエスクードに乗せて下山することに。救急車がここまで来る時間を考えたらこちらも動いた方がちょっとでも早い手当を受けることができる。
 
 無事に県道まで下山しましたが、なんと救急車は私たちが降りてきた別のルートから山頂方面へ向かったというアクシデント。
 降りてきた県道まであと1時間ほどかかるということらしいですが、これ以上の揺れが多い移動は怪我された方に負担がかかるのでここで待つことに。しかし、怪我された方も動かなければ大丈夫とのことで、これ以上私たちが狭い県道に車を並べておくのも迷惑なので、心配は尽きませんでしたが、撤収を決めました。
 山の中なので丈夫な枝でも探して骨折した足の添え木にでもできなかっただろうか。誰もが最低限の救急セットを持ち合わせてもいいんじゃないだろうか。搬送をかって出たことが結果的に救急隊のピックアップを遅らせることになってしまった。などと考えさせられました。
 林道自体は人の手による産物ですが、常日頃整備されているわけではないので、月日が経てば落石や地滑りで道が変形し、次に整備されるまではある意味、自然によってできた道と言っても過言ではありません。
 そこには危険が伴い、時には事故も発生します。ツーリングはレジャーの域と言えども、楽しみや面白さだけではなく、体験したことを次に活かさなければならない。なにより自然を甘く見てはいけないということを改めて感じました。


リポート Cyber‐Kさん

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