2006年11月26日。
 筑波山周辺の林道は、紅葉見物には最後のチャンス。夏の長雨と秋口の嵐に見舞われながらも、林道はなんとか崩落、陥没による通行止めを免れていた。4台のエスクードが退役するという。その送別をかねて、ショートツーリングに出かけた。

 

 この日集まったエスクードは13台。初代モデルはいずれも10年を越える7台。そのうち4台が、近々退役となる。その中の1台は、今回のツーリングを通して、もう少し現役を続けようかというユーザーの声を聞くことができたが、3台までは、既に乗り換えが決定している。
 人知れず、所有者だけの見送りで役目を終えるのが常ではあるが、たまたま仲間たちの時間を共有することができた。みんなでラストランの伴走をしよう。
 それが今回のツーリング趣旨であった。ジムニーシエラも見送りに駆けつけてくれた。

 

 時を止めることはできないが、そこで起きる出来事は、想いによって、わずかながらも叶えることができるらしい。彼らはいつも、そうやって満身創痍のエスクードを手入れし、走らせ、自らの記憶に焼き付けてきた。その記憶と想いは不思議な数式を生み出していた。
 13−3=13?
 あきれるほどに素敵なうちあけ話だ。
 新しいイグニッションのための、からっとしたさよなら。
 それは既に、何人もの仲間が選択した決断だが、この日ラストランを敢行する彼らもまた、同じ選択を決意していた。
 初代は、最終モデルが生産終了となって、早くも9年目が終わろうとしている。初代ユーザーにとってのこれからは、クレバスが横切り、路肩が損壊した林道よりも過酷な道だ。それでも曲がり角を曲がらない頑固で偏屈なスピリッツ。なぜ? と問いかけても無意味な問いでしかない。
 そして2代目、3代目のユーザーたちもまた、自らの未来を静かに見守っていた。
 エスクードは、そんな不思議な道へいざなう、想像を超えたクルマなのかもしれない。
 彼らが再び、エスクードのステアリングを握る日まで、ほんのわずかな時間のさよなら。
 いや、「それじゃ、また」と言った方がいい。
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