2007年12月2日。
 茨城県筑西市の下館オフロードコースにて、忘年会を兼ねたコース走行を開催した。2008年に誕生20周年を迎えるエスクードを、現在の3世代分まとめて記録撮影する目的もあったが、各世代のエスクードともなかなかよく走る。

 下館オフロードコースは、ランドローバー車の顧客サービスという側面がコース設計に埋め込まれ、そのサイズに合わせた設備構成となっている。そのため、ごく一部のセクションでは、トレッドの小さなジムニーではアタック不可能、ジムニーに対してやや広めのエスクードも無理という部分がある。しかし大半のセクションは粘土質の土で作られており、無茶な運転をしなければ、ジムニーは縦横無尽に走れるし、エスクードも同様にトライできる。

 「以前はオフロードコースや河川敷でオフ会をやっても、エスクードで積極的にフィールドへ飛び込んで行くのって、一部の限られた人たちだったように思いますが、去年のESCLEV下館オフをきっかけに、何か変わった気がします」

 確かに、ハードクロカンをあえてエスクードで取り組んでいた人たちの時代とは、ユーザー層が変わったかもしれない。20年近くになる時間の経過だけでなく、昨年と比較しただけでも、クロスカントリーのエキスパートが皆、エスクードから乗り換えしてしまっている。この日、下館に参加したユーザーの8割は、林道以上の荒れ地走行には慣れていないし、日頃頻繁にオフロードコースを走る面々でもないからだ。
 しかし、だからこそ「自分の車はどのくらいのオフロード走行が可能なのか」を知っておきたいという関心は強く、トランスファのローレンジを使いこなそうと、“真剣な遊び”が繰り広げられる。
 その点で、車を壊しやすいロックセクションであっても、ライン誘導していけば初心者もアタックできるコースというのは、軟弱と言われようとも利用する側にとってはけっこうありがたい。


 昔軟派で、いま本格オフロード性能。それがエスクードに対して論じられてきた、車としてのイメージ。どうあがいてもジムニーには敵わないし、ランドクルーザーのレスキューがなければ身動きの取れないスタックも、なじみの実力だ。エスクードに乗っている以上、身の丈は知っておかなくてはならない。しかし、コースの難易度を低めに設定しているとは言っても、3世代ともよく走る。もともと電子デバイスなど知らない初代や2代目は、足の伸びとクリアランスさえ確保できれば、イメージ以上のステージに持ち込める。

 「君らはライン取りがなっちゃいないんだよ」

 山梨の溶岩台地を開拓し、農地の中にオフロードコースを持っている農場の親父が、岩につかえて登れないエスクードを笑っていたときの言葉を、今さら乍らに思い出す。低速トルクが出せるといっても、程度問題。力押しで突撃できるような走らせ方は不得手なのだ。それがわかってくると、中難度の岩場は、昔軟派な初代でも乗り越えられる。
 本格オフロード性能の、しかしSUVとして位置づけられた3代目はどうだろう? これが意外なほどに、その性能を発揮する。足まわりをいじり、ホイールのインチダウンでタイヤ側の外径を上げるなどの工夫もしているが、XSが岩にトライ。車幅によるライン取りと、やはり下回りのクリアランスに苦心したが、同じセクションを堂々とクリアした。
 
 「去年は闇雲に走ってましたね。今回はイメージしながら鼻先を向けたりしました」
 「そうそう、ことしは“怖い”と感じることがありました。去年は何も知らずに走っていたんですよ」

 3代目ユーザーのコメント。確実にエスクードの走らせ方が進化している。
 遊びの範疇であっても、彼等は3代目エスクードの基本性能をフルに引き出せる、パイオニア的なポジションにいるのかもしれない。

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