スズキ、トヨタ、ダイハツの共同開発によるインド発のバッテリーEVとして、海外ブランドでは長く定着してきた「VITARA」は、誕生37年目にして日本名「エスクード」を切り離した。四代目に相当する「ビターラ」も、ハンガリー生産モデルを維持している。
しかしスズキが新たな世界戦略車に選んだのは、自社初のBEV、「eビターラ」だ。このモデルはトヨタからも「アーバンクルーザー」の名でOEM供給される予定だが、スズキ版のいで立ちにもどこかトヨタ風味がにじみ出ている。
販売開始は2026年1月から。25年9月18日の先行展示会時点で先行予約の体制はできているが、
「当店はもとより、国内に何台輸入され出荷となり、どの程度の割り当てがもらえるのか全く不明で、1月の即納は難しいかもしれない。ジムニーノマドのときのようなパニックには至らないと思うが、最短でも三か月乃至六カ月はお待たせするのではないか」(関東地方で最も展示会の早かったスズキ自販千葉 アリーナ松戸)
メーカーティザーサイトや、展示会で配布されたリーフレットには「ぜひ試乗して体感してほしい」とアピールされているのだが、この予定も今後の期待となる。
スペックやメカニズム、価格帯に関してはカタログ、メーカーサイトに詳細を譲るが、三代目エスクードが登場したときの「総てを一新する」以上に、思い切った舵とりをしているのが第一印象。クロスオーバーSUVというジャンルを四代目エスクードから引き継ぎ、EVという新機軸で世界的な自動車事情に対応しようとしている。
初代、二代目エスクードと比較すると、大柄ではあるがその寸法内ではコンパクトにまとめたと感じられる。
クラムシェルタイプのエンジンフードやリアフェンダーに残るブリスター風のデザインは、初代エスクードの名残であり、二代目エスクードのグラマラスなラインの面影を持つ。しかしシートやコンソールの作り込みが高級感ありと評価されているようだが、前後ランプ類のカバーとなる透明パーツは必要だったのか? あっという間に擦り傷だらけのみすぼらしさに変化してしまうような気がする。
今般、先端のアプローチなのだろうけれど、運転席からセンターにかけて計器類やナビゲーションを投影するクラスターも、とって付けたようで馴染まない。
フロンクスのときに後部座席に乗り込む際、頭をぶつけたが、eビターラもそこそこ天井が低い。前席では気にならない室内高が、ルーフデザインのために後席ではどうしても窮屈感を覚える。足元についてはシートアレンジで後席でも大人がまともに着座できる。
後方視界は歴代(便宜的表現)最低の悪さだ。
展示車両はグッドイヤーの18インチを履かせている。サイドシルの樹脂パーツによって一見、腰高に見えるが、突出した最低地上高ではない。ここは尋ねてみた。
昨今の記録的短時間豪雨で想像を絶する道路冠水が起きた場合、そこを走らないことは安全の第一前提だが、仮に、やむにやまれずタイヤ半分ほど水没したようなところを走り続けた場合、フロア下のバッテリーは大丈夫なのか?
「eビターラのバッテリーは防水仕様となっていますが、それほどの水深に入ってしまうと、アウトです」
そのことを責めるつもりは毛頭ないが、eビターラでは泥濘地や深く大きな水たまり、渡河などはやらない方が良いようだ。クロスオーバーSUVは、クロスカントリー4WDではないということだ。
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