ESCUDO
TA01Wという四輪駆動車

 スズキエスクードは、1988年5月に、デュアルパーパス性能を備えた4WDとして誕生した。
 世界的にその名を馳せていたジムニー(ただし、ジムニーにもオーバーリッターモデルは存在する)の上位に位置する小型自動車であり、そのジムニーからはオフロード性能の一部を譲り受け、ショートホイルベース、FRベースのローレンジ切り替え可能な4WD、1tを下回る軽量さを、小型車枠で実現した。
 小粋でシンプル、ワイルドさが板に付いていたジムニーに対して、当時のプジョー205シリーズをオフロードルックに仕立てたようなフェイスと、前後のブリスターフェンダーを纏った姿は、それまでのトラック、作業車、戦闘車両からデザインが派生していった4WDとは一線を画し、1600ccという小型枠でも小排気量の、クラスの間隙をついた新しいマーケットを切り開いていく。
 当時、そのゴツゴツした粗野(失礼)なボディーを山野から街に降ろし、ミスマッチさを楽しんでいたユーザーへのアンチテーゼなのか、そこに目をつけた隙間市場へのトライアルか。アメリカ西海岸で、へたくそなドライバーが車の挙動を学ばずに次々と「サムライ・ジムニー」を横転させ、訴訟が続いたことへの対策か。今となってはどうでも良いことだが、しゃれたデザインを4WDに与えたエポックがある。
 昭和の終わり、バブル景気のさなかということもあったのだが、エスクードのカタログを今開いてみると、現在の最新版のカタログでは考えられないほど丁寧な作り、リアルで美しいフォトグラフがちりばめられている。
 とはいうものの、ショールームで出逢ったその実物は、地味な配色とあまりの素っ気なさ、お世辞にも高いとはいえない質感と作りに、実際にはがっかりしたのである。
 よもやこの一台が、ライトウエイトクロスカントリーというカテゴリーを開拓していくとは、そのとき、想像も出来なかった。
 左のスーパーデザインコレクションはまだ存在せず、エスクードとの出逢いは、少なくとも僕には肩すかしだった。