The encounter of the moon's surface
 月に物体を送りこむ作業は、人工衛星等の場合、衛星の遠地点が月の公転軌道に達する「長だ円軌道」に打ち上げる方法がとられる。
 打ち出す際の速度は、高度0mからだと秒速11.088km、高度200kmなら秒速10.915kmが必要。地球から水平に秒速11.2kmで打ち出せば、その物体は地球の重力を脱出して太陽の周回軌道に乗り、この「第2宇宙速度」と「放物線軌道」を維持すれば、物体は月へ到達する。
 地球と月との間には、両者の重力がつり合う「中立点」があり、だ円軌道の場合、この中立点付近を遠地点とする「長だ円軌道」に載せて月に送りこむ。
 物体が中立点を通過するとき、地球の中心からの方向が打上げ点と地球の中心を結ぶ線に対して15度40分であれば、確実に月に到達する。月まで飛行するのに要する時間は、だ円軌道の場合は約4日と20時間、放物線軌道ならば約2日ほどだ。
 月は地球と最も近い天体だ。その距離は約384,400km。地球の赤道を10周した距離にあたる。月の大きさは、赤道直径が約3476kmで地球の約4分の1、重さは地球の81分の1程度だ。

 月着陸を初めて実現したのは、無人探査とはいえ旧ソ連だ。
 1966年に、ルナ9号が月面軟着陸、70年に16号が無人で月の土を採集し、17号に搭載された自動月面車ルノホートが稼働した。
 アメリカは64年、レインジャー計画6号で月面に到達、66年に無人探査機サーベイヤーで軟着陸に成功し、アポロ計画による有人月探査が成功する。
 日本の宇宙航空研究開発機構では、90年1月にスイングバイ衛星「ひてん」と孫衛星「はごろも」を月周回軌道に投入を成功した。 現在、月周回軌道上からペネトレータを放出し、月面に命中させ、内蔵した地震計と熱流量計によって月の内部構造をさぐる「ルナA計画」を進めている。また、アポロ計画以来となる日本の大型月探査計画「セレーネ計画」が 実施される予定だ。月面車や着陸機を利用した月探査の検討も行われている。
 
 その日、再び月に到達した人類が目にする月面において、その物体との遭遇が果たされるかどうかは、定かではない。仮に遭遇が現実のものとなったとして、誰が、どのようにして送り込んだのかを解明できるかどうかも分からない。

 その物体は、その日をただじっと待ち続けている。