モーニングにカレーパン ランチにカレーライス!
team KARUISAWA アイアンストマックツーリング再び

 Le gitane blueさんが新しいオープン2シーターを手に入れた。黒いアルファロメオ・スパイダーだ。聞けば1991年モデルだという。ぷらすBLUEと同年式とあっては、2台を並べてみたくなる。ユーノスロードスターととるねーどらすかるに継ぐ凸凹のコンビネーションだが、今回はこちらもコンバーチブル。team KARUISAWAの復活だ。
 しかし既に胃袋のくたびれた現在、御代田のパフェや見晴台の力餅は食い倒せない。どうしようと思っていたところへ、目についたのが栃木県足利市の珈琲蔵(カフェ グラ)という喫茶店。併設されたパン工房から好きなパンを買い求め、珈琲と一緒に飲食できる。ややパワー落ちしながらも、アイアンストマックツーリングはここで待ち合わせることとなった。
 「コンバーチブル、小さいですねえ。お店のノマドも、おととい10万キロを超えましたよ」

 Le gitane blueさんは、ことし屋根を開けての走り納めにと、オープン状態でやってきた。気温は18℃と、この時期としては暖かな日和だ。ぷらすBLUEは頭の上だけを開けてある。
 珈琲蔵は、文字通り古い蔵を改装した2階建ての喫茶店。15年前のクルマを並べるのに良いロケーションになるかと思ったが、パン工房部分の自己主張が強く、クルマの置き場所に失敗した。しかし静かなお店で、脱走し、こっそりお茶を飲みに来るには良い雰囲気だ。
 胃が弱っていると言いながら、選んだのはカレーパン。これで今日のテーマが決まる。大丈夫か? 胃もたれしないか? その心配はなく、かりかりと揚げられたパンの柔らかな甘みに、少々酸味のきいた中辛のカレーが入っている。これをかじり、珈琲をブラックのまますする。珈琲は追加オーダーしたくなる、あっさりした味わいだ。
 小一時間談笑し、ツーリングの行き先を決める。目的地は赤城山の大沼。team KARUISAWAは颯爽と走り出す。


 赤城道路を駆け上がっていくと、山頂には霧氷が観測できた。外気温は4℃にまで下がっていた。大沼は、つくばーどin赤城以来、二度ほど訪れているが、さすがにウイークデーで閑散としている。
 「軽井沢と赤城は、それほど遠い距離ではないんですが、17号線を渡る、渡らないという生活圏がなんとなくあって、こういう機会でないと来ることがないんですよ」
 Le gitane blueさんときたら、足利に来るのも初めてだったらしいが、使っている地図が高速道路のSAで配布されている、上信道周辺の大まかな地図だけだった。方角はつかめるだろうけれど、足利の街なかに、よく迷わず入ってこられたものだ。
 湖山食堂に暖をとるために飛び込むと、“コーヒー付きカレーライス”なるメニューが。
 「やっぱりこれでしょう」
 迷わず注文。出てきたのは甘口のカレーライスだが、甘く見てはいけない。そのへんの立ち食い蕎麦屋の、いかにもレトルトベースな苦酸っぱいカレーライスに比べたら、堂々たるうまさだ。
 赤城レッドサンズの高橋兄弟も食っているに違いない。と思ったら、テーブルになにやら書き置きが。
 『渋川市の藤野屋豆腐店が、道路拡張のために取り壊しの危機にある』という、頭文字Dファンの署名運動だった。映画のロケに使われた豆腐店の保存運動が始まっているらしい。

 「ところで、夕食もカレーの予定ですか?」
 team KARUISAWAとしては、それを外すわけにはいかないだろう。ツーリングは赤城道路を下って流れ解散になったが、お互い、珈琲蔵のカレーパンを、別途買い求めてある。今夜はそれを食って、晩飯としよう。 

 アルファロメオ・スパイダーのことについても、触れておこう。

 「1991年式、ということに大きなこだわりはありませんが、
 スパイダーがスパイダーらしさを取り戻した最終型が、僕の理想であったことは確かです。
 1966年から、93年に生産を終えるまで、4回の大きなマイナーチェンジをしています。
 その中で、ボディーラインデザインの原点回帰+90年代的モダナイズをなされた、91年式以降の
 Sr.4といわれるモデルが、デビュー当時から、僕の憧れでした」

 Le gitane blueさんが、このクルマを選んだ理由を話してくれた。
 この世代以前のモデルは、ボディにエアロパーツが標準化されていて、そういった演出に人気の出た時代だったという。90年代に入り、モデル末期を迎えた折、ピニン・ファリーナたちも、原点回帰させてリファインしたのだという。
 ツインカムの2000cc。可変バルブタイミング機構を搭載しているそうだ。高回転で走ったユーノスロードスターと異なり、トルクを活かして走れるようだ。ミッションレバーの突き出方がユニーク。さらに凝っている割には視認性の悪いメータークラスタが、イタリア人のドライビングポジションっていったいどうなっているんだ? と思わせる。
 「キャンバストップのラッチパーツなんかは、丁寧な作り込みをしていますよ」
 オート開閉のトップを持つクルマが半ば当たり前の時代になっているが、15年前の時点で、実に合理的で簡素なトップの手動開閉機構。屋根を閉じるとマスの変化が起こり、塊感が出る。
 楽しそうなクルマだ。ちょっと線が細いイメージもあるけれど、イグニッションすると、なかなかどうして図太いエキゾーストが響き渡る。これで1100kgちょっとだというのも驚きだ。Le gitane blueさん、赤城道路の下りは流して走ってくれたので、ぷらすBLUEでも何とかついて行けたが、本気で走ったら速そう。なんといってもラテンのクルマなのだと思わされる