京都市右京区で開かれたプロジェクトカップXCダートレース。シエラを含む24台のジムニー、親パジェロ、チェロキー、RAV4を向こうに回し、teamWESTWINのshimaさんが送り込んできたのは、ターボ仕様のパジェロミニだった。
 「私が育てた、戦って、勝てる秘蔵っ子です」
 shimaさんがそこまで言い切る。自身のために用意したTA01Wを退いてでも、この選択と作戦を委ねた若者たちには、何かを起こす底力が秘められているのかもしれない。
 そうでなければ、出走するはずだった2機めのエスクードがshimaさんごと参戦できない、昨年、主催者のデモカーに落ち着いたというE−376エスクード(旧白狼)も出ない、そのE376とバトルしていた2台のエスクードも今年はいない。それらを直前に知らされていた状況を蹴倒して、京都の山奥までやってきた意味がないではないか。
 しかし、teamWESTWINに、こちらの事情を知る必要はない。彼等は90分にまとめられた混合レースを戦わなければならない。我々にも異存など無い。今日は問答無用で、エスクードではない車を応援するのだ。
 そんな心配をよそに、teamWESTWINの2人のドライバーは、バリバリのダートレースジムニーたちをかわし、チェロキーの頭を抑え、転倒も大きな接触も見せずに、クレバーな走りを展開する。
 あとで聞いたら、ミッションやエンジンマウントに不調を抱えていたという。それをだましだましの走りではない。周回ペースを維持する。そのために投入されていくテクニックとメンタリティ。アンダーステアで飛び込んでくるジムニーの豪快さにかき消されてしまう堅実なコーナリングだが、彼等の表情を見ていると、きっちり熱くなっている。それでいてペースは衰えず、車の破損もほとんど無しで90分を走り抜く。
 朝一番で挨拶にやってきてくれて、レース終了後すぐに、応援に来ていた仲間達へ礼を言いに戻ってくる。誰が見たって爽快な奴らだ。なるほど、師匠は技術だけではない、いろいろなものを彼等にたたき込んでいたのだと感心し、完走に対するねぎらいを言葉にしようと思っていたら・・・
 本レースの最多周回数タイ記録。つまり、タイム差だけの勝負となっており、そのタイム差はリタイアした2000cc以上と23台のジムニーをはね除け、堂々の2着をもぎ取っていた。彼等は表彰台に登り、胴上げし、泣きながら師匠に報告の電話を入れた。
 なんという連中だろう。フロックの要素が皆無とは言わないが、こんなドラマ並みのレースを見せてくれるなんて。
 このチームを応援できた我々の方は、まさにフロック・ラックなのだが、当初の予期せぬ不測の事態に流され、観戦を断念していたら、彼等と出逢うこともなかった。お世辞抜きに、感心は感動に格上げとなった。