《裏庭に雪がつもった》

 で、まず思うのは“地球温暖化”が進行しているということ。
 何故というに、30年間、都市化の波も訪れないわが家の周辺ではヒートアイランドが起きているわけでもないのに、積雪量が年々少なくなっているからです。
「昔は雪が降ったら家の前の坂道でスキーが出来たし、その坂を上がってこられるクルマはなかった」
 実際、庭の雪が半日でとけてしまうようなことはなかったので、関東地方でありながら東北にほど近い雪遊びができたものです。
 かまくらとか雪だるまは当たり前、橇だって自分で作って・・・
 というわけで、思いつき行き当りばったりの橇づくりをはじめることに。古式ゆかしい方法では、適当な長さで竹を切りだしてきて枝を払い節を削り、二つに割って先端を火であぶりながら反らせる。というやり方があります。座面になる部分は廃材利用で藁縄や釘によって竹に組みつけるのです。ホームセンターに行けば、プラスチックのボートが安く売られていますが、そういうのは“よそ行き”です。
 しかし今回は、ちょっと(いや、かなりか)横着した即席の橇を製作。果たして、これが滑走可能かどうかを子供たちに試してもらいました。
 裏山から続く稜線の、南向きの斜面地にある我が家には、その傾斜をそのまま残した家庭菜園らしきものがあります。たいした斜度ではないけれど、子供が橇を遊ぶにはちょうどいい緩斜面と、距離。積雪はおおむね10cm。にわかゲレンデというわけです。
「うわー、するする行くよー」
「これおもしろいよお」
 奇妙な形の橇・・・というより、子供たちは橇で遊ぶということそのものが、初めてなので、“座ったものが雪の斜面を滑走する”単純な物理運動を、いっぺんで気に入ったようです。まっすぐ進める方法、曲がり方と止まり方。けっこう知らないうちに、体重の載せ方、荷重移動を覚えているようです。
 ひとしきり遊んだあと、長女の霰(あられ)が言いました。
「あれれ、このそり、どっかでみたことあるよ」
「ほんとだー、これ、たてにするんだよ。きっと」
 とは、次女の霙(みぞれ)。縦にするというモノの見方に気がつくと、彼女たちにはその橇が、本当は何であったかが判ったようです。
「これ、この前こわれた、お台所のイスだ!」
 ああっ、ばれてしまいました。そうです。前脚が折れて廃棄処分となった、食卓の椅子
の後ろ足と背もたれに当たるパーツこそが、橇の正体でした。座面は先日、風呂釜の燃料として解体した杉材の、いわゆる“薪”を打ち付け、舵取りの荷重移動をしやすいように適当な紐を手綱がわりに結びつけ、製作原価ゼロで完成したモノです。
 いーんです。ちゃんと滑走できたもの。けっこう橇してますよ、こいつ(笑)