北緯41度への到達
いずれ再び海峡を渡る予感
 かもめ食堂開店の1時間も前に、大間町に到着してしまった。
 「いいよいいよ、すぐ用意するから、最北端の地の記念碑の写真でも撮っておいで」
 お店のご主人に歓迎してもらい、まず写真。以前来た時よりも観光地化されていたが、8月の初旬なんて、こんなものなのか?という人出。確かに地産マグロの季節は9月過ぎからだが、写真撮影に順番待ちもない、静かな風景。
 「震災の後、ぐっと客足が減ったね。それに地元の人間も、今は復興の現場に仕事を求めて南下しているから、町の人口も少なくなっているんだ」
 閑散とした店内で、マグロ丼をいただきながら世間話をする。4年前にSIDEKICKさんが注文した時とは異なり、キュウリの彩はなくなっているが、マグロの切り身はなんだかやけくそのようなてんこ盛りだ。
 近所の土産物屋で買い物をすると、会計の時に値引きしてくれた。それがいつものことなのかどうかは定かではない。本州最北端の到着証明書というのを見つけ、これを買ったら、やはりいきなり半額となった。
 「林道って、山道? だめだめ、今日はクマが出たって防災無線で言ってるから、国道を行きな!」
 バイクツーリングの男の子がアドバイスを受けていた。国道を進んでも、山道は山道なのだけれど(こっちはそんなこと知らないもん、その林道を走ってきちゃったよ)
 ひとまず、作戦室までのナビゲーションを設定する。なにを考えているのか、フェリーに乗れと勝手に埠頭へ経由地が組み入れられ、このばかナビが! と、むつ市の客先の事務所を設定しなおす。それでも仙台まで480kmを超えていた。
 本州最北端からの南下は、338号線か279号線か、どちらかを走り出すことになるが、楽をするなら後者。げっぷが出るほど走りこみたいなら前者だが、佐井村から地方道で距離短縮も可能だ。
 しかし仏が浦の断崖くらいは見ておきたいと、分岐点のある佐井村の漁港は通過してしまう。でもその先もずっと佐井村が続く。夏だからできる行き当たりばったり。吉村昭の「魚影の群れ」から矢野徹の「カムイの剣」へとイメージを切り替えながら、再び海峡に沿って走る。
 客先とは無難に連絡が取れたが、さすがにときどき、FОMAでも圏外が断続する。それでも時間にも燃料にも余裕があるので、あわてずに先へ進む。下北半島の行政区域はとにかく広い。むつ市の大湊で客先に立ち寄るが、ここから先がまだまだある。
 横浜町から六ヶ所村に抜ける県道が、半分はダートだと客先で教わる。帰路は青森からではなく、また八戸を目指すことにする。山越えして泊からまた338号線へ。カメラも電話もここで電池切れ。三沢で1時間ほど仮眠し、帰路に就いた。