《つくばーど in 内房漂流》
 
「つくばーどって、体育会系なんですって?」
 「な、何の話だそれは???」
 「いやほら、夜会をやると二次会は100km先のファミレスだとか言われてるし」
 「そういうノリの話かあ。ああびっくりした」
 つくばーどは、決して体育会系なんかじゃありません。
その証に、2002年10月の記録を再録してみました。
 その晩、千葉市内の国道沿いのファミレスで夜会が開かれた。
 “そのうわさ”が事前に広まっていたのか、このときの参加台数はいつもの半分以下。3台のうち1台は初めて夜会にやってくるという、“そのうわさ”自体を知らないドライバーであったから、幸運なのか不運なのかは定かではない。
 この日の夜会は、クルマのマイナートラブルの話題が多かったように記憶している。
 いずれも11型の2000ccV6エスクードとプロシードレバンテであったが、うち2台はそれぞれドライブシャフトまわりや、ブレーキ系統から異音がしていた。
 らすかるもこの2ヶ月後に、オープンデフの寿命が来ることになる。というより、らすかるはまだこのときは、あーまーどバージョン2002の頃で、デフトラブルのあとに見舞われる当て逃げなど、想像することもできなかった。
 このときの夜会の話題から後日、リアブレーキの整備に出された1台のクルマは、なんとシューの組み付けミスでブレーキそのものを破損させてしまうことになり、某早くて安いが仕事の雑なカー用品店の信用を失墜させる大トラブルにまで発展した。

 その話は置いといて、ひとしきりクルマ談義が弾んだ夜会も3時間ほどが経過し、日付もいつの間にか変わっていた。
 「それじゃあ行きますか。二次会」
 「あ、河岸を変えるのも良いですね。行きましょう」
 「どこにしますか?」
 「うん、館山市の海岸にね、目の前に富士山を眺められるファミレスがあるから、そこに行こう」
 この一言に、参加者の顔から血の気が引いたのであった。
 千葉・館山は、距離にして約100km。松が丘インターから館山自動車道で木更津南インター(02年10月当時)まで高速を使い、国道127号線と富津館山道を交互に乗り降りすると、約90分で移動できる。
 深夜のツーリングなので、渋滞もなく快適に走れる。が、実はこのとき、ドライバーの一人は、往復200km長距離を走るのも、高速道路に乗るのも初めてだったというから、幸運だったのか不運だったのかは定かでない(注:もちろんそれを知っていてのサポート走行をしております)。
 おまけに秋とはいえ低気圧の通過したあとで、内房には珍しい寒さ。当然そのような天候のため、日の出も対岸の奥に見えるはずの富士山も拝むことができない。ついでに言えば、内房の湾の海を見ているのだから、日の出は背中の方からやってくる。
 だからもう、幸運なのか不運なのかは考えない方が良い。
 二次会で暖を取りながら時間を見て、海岸沿いの護岸の駐車スペースにエスクードたちを並べると、不と幸は彼等の中で入れ替わる。
 こういうのもツーリングの一コマ。そしてほんの片鱗を見ているだけ。夜明けの一瞬、そのわずかなひとときを、それぞれ独り占めにするのだ。

 「さっ、明るくなっちゃったから、帰るよ」
 幹事は無情にもうひとっ走りを強要するのであった。