「あけましておめでとうございます!」

 と、この男はにこにこしながらやってきたのである(なんだか昨年と同じ書き出しだなあ)
 もはや浜松からの大晦日荒行は驚くには値しないから、来ようが来るまいが、今年の元旦レポートは書かないし、どこにも出かけないと思っていたところに、
 「いやー、急に休みが取れちゃいまして、海まで行って来たんですけど、房総半島に回るか初詣するか考えて、こっちにしました」
 ・・・いいのか、まだ新婚二年目に入ったばかりだというのに。と説教のひとつもしてやろうとすれば、これが新年早々ノロケ話のお土産と、それを裏付けるかのような写真入の年賀状(こっちは朝のうちに届いている)
 聞けば妙高の市街地には降雪が無いという。どうりでこのあたりにも雪の予報が出ていないわけだ。
 「お・・・おまえらいい加減にしろよーっ」
 
「いや、俺はのろけてませんからっ」(浜松の人)
 と、結局は裏山詣での初走りに出かける羽目となった。こんなことならタイヤを冬用に換装しなければ良かった。粘土質むき出しの急傾斜まで連れて行けば、いかにランクル70でも登れまいと画策した。現地までにはV字ターンから枯葉のヒルクライムというセクションもある。
 70の長さでは切り替えせまいと眺めていると、余裕で四駆を抜いて回ってくる。さらに思わぬ誤算、このセクションは藪こぎでもあり、車両を前に進ませてしまうと、人間が藪の中を進まなければ自分の車の位置まで戻ることができないのだ。それを思い出したときには、ランクルは坂道を登り終えていた。
 むむむ、やっぱり格が違うなあ。などと感心している場合ではなかった。目的のセクションまで行ってみると、林道そのものが流水で砂利と枯葉を洗い流した第二の斜面は、最近誰かがアタック失敗したらしく、足場にしたいポイントを思いきり掘り返してしまっていて、こちらのトラクションもかけられずにあっけなく敗退。
 バックで戻る際には、緩い左カーブで沢を渡る区間が待ち受けており、土管を埋めた道の両サイドには何もガードが無い。車輪を落としたら車は置いて帰るしかない。
 結局この斜面はアタックできずに、その先にある森の中の広場で撮影もできず、昼飯を食いに下山。新年早々情けない顛末となったが、寝正月しているよりは楽しい元旦。浜松、妙高からの来客には、感謝の言葉も無い。