ほとんど朝練の「秋保に8時」
 二口線が11月3日まで山形に抜けられる。
 宮城県が、なんとなくそーっと発表していた。奥羽山脈を越えて仙台市から山形市へ続く二口街道の難所は長く崩落通行止めとされていたが、3年前に12年ぶりの再開通を果たしながらも、継続される工事などで、年間通して通行できる期間は限られている。
 宮城側では大東山への登山口、山形側は山寺こと立石寺を麓に抱き、通行できなくとも交通量が多いだけに、県境ゲートが開いていれば渋滞必至ですれ違い困難区間もそこかしこにある。
 しかし紅葉シーズンには少し早いし、開放初日の朝ならなんとかなるのではないか? という目論見によって、まるで朝練のようなショートツーリングを敢行した。
 同行したのは作戦室の隣県に住むパジェケンさんと、基地の隣町に住むコムロさん。いいじゃんかよー。要するにご近所の隣人なのっ(なんちゅー人選基準か)
 ところが集合時間30分前に宮城側の秋保ビジターセンターに来てみれば、センターを通過して林道方面に入っていく車両の多いこと。
 うわー、ゲート開放9時だよ? 並ぶの? とビビっているうちに2台の3代目エスクードがやって来る。
 「いきなり寒くなりましたねえ」
 「台風が接近しているのに雨が降って来ないだけよかったよね」
 「だけどかなりのクルマが上がっちゃったんで、やっぱり渋滞しそうだよ」
 仕方なく並ぼうかと8時30分に白糸ゲートまで上がってみると、なんのことはない、登山口をめざした人たちばかりでゲート前は単なる駐車場となっていただけ。県境ゲートまで点検に向かっていた県職員が戻ってきて、25分前倒しでゲートを開けてくれた。
 曇天ゆえに紅葉し始めの山の樹木はパッとしないが、体育の日の連休には見ごろになるだろう。本格的な混雑はその頃か。
 などと考えているうちに、林道走行速度で走っていても標高900mの展望台区間に到達してしまう。対向車も後続車もなかった。
 宮城側の路線補修は確実に進んでいて、途中区間に何か所も舗装路面が出来上がっていた。山形側はすでに全線舗装化されている。だが路線で言うと山形側の方が狭く見通しのきかないコーナーも多い。
 中腹にある高沢馬形ゲートへ下り、立石寺方面へは向かわず分岐している高沢馬形線へ分け入る。伐採のために切り開かれ、現在は植林作業用として使われているフラットダートの短い林道だ。分水嶺もありわずかな区間に見晴らしの良い場所がある。
 困ったことにここを走りきってもまだ10時を少し回ったくらい。誰だよ渋滞で動けなくなるルートだなんて言ったのは。
 山形市内の紅花蕎麦のお店まで移動する途中、三本目の林道にアタックするが、肝心の分岐点で車両通行止めの道路標識に阻まれ撤収。
 あとで調べてみるとこの標識の設置位置がおかしい。どうやら本線のように見えたルートが行き止まりという意味だったらしく、この林道自体は抜けられたようだ。それでもこの寄り道で、蕎麦屋の開店時間にあわせて現着できた。
 綾波のご主人は海自の護衛艦勤務をした方で、艦名を店名にしている。元祖紅花蕎麦の店である。が、この店は紅花蕎麦もさることながら、昼食時に一品をサービスしてくれる。現在はえび天とハス天がついてくる。
 「それはうれしいですけど、この蕎麦屋のハンバーグってのはインパクト大ですねえ」
 そうなのだ。蕎麦屋のカレーというのはよく聞くが、煮込みハンバーグを食えるというところも名物なのである。
 というわけで、8時集合、11時に昼飯と、ほんとに朝練のようなツーリングになってしまった。最遠方のコムロさんですら、夕食のために自宅の台所に立てたはずである。