継承された拘り
マニュアルミッションのXG

Report by Mr.yoko

 新型エスクードのマニュアルミッション車に乗ることが出来た。
 前提条件として、あくまでも私が現在乗っているTD11W(2.0 V6)との比較でしかレポートする事が出来ないことを始めに明記しておく。

 まず、最近の車では常識なのだろうが、エンジンを掛ける為にはクラッチを切る必要がある。したがって、緊急時にセルで車を動かすことは不可能。これはAT車も同じなので仕方ない事か。
 クラッチを踏むと、これが異様に軽い。まるで軽自動車の様と言えば言い過ぎだが。たった今まで運転してきたTD11Wと比べるとそれくらい違う。これは渋滞では楽だろうと感じた。しかし、相変わらず半クラッチの感覚は分かりにくい。シフトレバーは見かけよりも短くは無く、従ってストロークもしかりである。しかし、TD11Wの様に初期の硬さはなく軽く操作出来た。
 走り出しの際はあまりその重さを感じる事はない。しかし、アクセルが異様に重い。クラッチの軽さとはまるで対照的である。この感覚はまるでAT車の様である。おそらくスロットルバイワイヤ(ここでのワイヤとは電線の事)のためにアクセルペダルの機構はAT車と同じ物だと思われる。



 個人的にはアクセルは軽い方がコントロールがし易いと思っている。現実的には重いのはアクセルでは無く車体の方なのだけれど・・・
 アクセルを重く感じる原因として、その車重とそれに相反した高い燃費重視のギヤ比にある。
 つまり、ハイギヤード化と重くなった車重の為に加速は悪く、それだけ低いギヤで高回転まで回す必要があり、結果として当初の狙いとは裏腹にかなり燃費は悪化すると思われる。
 そして、その高回転化により、加速時でのエンジン音はかなりうるさい。細かな遮音対策によってロードノイズは小さく抑えれれているだけにこのエンジン音は意外であった。やはりL4のエンジンはV6と比べ振動も多く滑らかとは言い難い。しかし、気合いを入れて重いアクセル踏み込めば燃料カットの働く6,800rpmまでは回す事は出来るが、そこまでの時間とその騒音・振動はそれなりである。

 前回AT車を試乗した際に感じたサスペンションの異様な硬さは今回はそれ程感じられなかった。明らかに硬めではあるが、ある程度の速度で走っているときの路面の凹凸では上手く衝撃を吸収している様であり、少なくとも前回の様な跳ねる感じは皆無だった。
 今回は高速道路を走る事は無かったが、ある程度速度(一般道なので想像に任せるが)を出した時の安定性には素晴らしい物があり、明らかに高速を重視している事が分かった。恐らく、高速道路での長距離の移動は快適なものだろう。
前回の試乗車は初期ロットでの不具合があるのか、ある程度走れは馴染んできて硬さは取れるのだろうか。
 因みに今回の試乗車の走行距離は350kmだった。
 初期不良に関しては、次に試乗したTD94W 2.7XS/5ATに関するディーラーの話では、やはり2.0XG/4ATの方がサスペンションが硬いとの事であった。車重の違い(70kg)はあるにせよ、サスペンションの部品は両車とも同じにも関わらずである。

 そんな訳で、ワインディングを走るにはあまり快適とは言い難い。つまり上りではその重さ故に加速が悪いので、どうしても高回転を多用し、こまめにシフトチェンジをする必要がある。
 また、下りでもやはりエンジンブレーキが利きにくい(感覚的にTD11Wと比べて)ので、きちんとギヤを落とす必要がある。
 これらは基本であり当然と言えばそれまでで、TD11Wのイージードライブに慣れてしまった自分としてはである。気合いを入れて走るにはそれなりに楽しいとは思われる。
 また、これは重さが原因なのかもしれないが、前述のスロットルバイワイヤの事もあり、右足にダイレクトにエンジンが反応してはくれない様な感覚があった。これもMT車を運転する楽しさを半減するものである。


 結論としては、確かにMTではあるし、MTならば良いという場合を除いて、あまりお奨めではない。
 MT故の楽しさは少なく、やはりこれ位の重量の車ではATの方が快適だし、そういう車(峠を走る)ではないのかも知れない。
 そして、"何時までもマニュアルミッションに拘るなよ”とメーカーが言っている様でもあった。
 矛盾する様ではあるが、それでもMT車を残してくれたスズキには感謝したい。
 出来れば、2.7Lのマニュアル車を出してくれると良いのだが(やはり拘っている?)

 このほか気が付いた点を以下に・・・

1.中途半端にしかたためないドアミラー
 写真を撮っていないが、ミラー面が30度程度開いた状態にしかたためない。
 しかも、あの分厚いミラーなのでかなり出っ張る。
 もっとも、初代のエスクードはたたむと(しかも手動で)ステーに当たって傷が付くし、逆輸入車では畳むことさえ出来ない物もあった様な。

 2.前後ドアの窓枠の黒い部分は塗装ではなく、シートが貼ってある
 窓枠の形に1枚で作るのは無理な様で、角の部分が重ね貼りしてある。
 塗装の方が高級とは言わないが(言ってるだろ?)他の部分に高級感があるだけに、何かショックである。
 カタログの写真でも目を凝らせば重ね貼りの線を発見出来る! 国内の他メーカーの車でも同様なのはあるけれど。

 3.リアワイパーは約180度動く
 リアウインドウガラスに穴を開けて付いているワイパーの作動角度は180度近い。
 しかし、喜んではいけない、中央部分しか拭くことが出来ず、左右の拭き残し部分は意外に大きい。
 初代ではリアワイパーはスペアタイヤとの間に挟まれて立てる事が出来なかったが、新型ではちゃんと立てた状態で止める事が出来るので雪の際には便利である。
 因みに、私の車はリンクを付け替えて通常とは逆の位置でリアワイパーが止まる様にしてあるが、これも雪がワイパーの上に積もらない様にである。(実際にはそのような事態は年に1度位だが。)

 4.前席を倒してもフラットにはならない
 この事は以前から分かっていたが、念のため試して見た。
 前後のシート間隔は広がったが、それ以上にシートが大きくなったのか。
 実際には、前方向のシートスライド量が少ないような気がする。
 あと10cmと言ったところか。
 昔はフルフラットシートって宣伝して居たようだが、あまり評判が良くなかったのか?
 需要はあると思うが。


※取材とレポートは、エスクード仲間のyokoさんが行い、テキスト・写真を提供して下さいました。