《S.I.C.ジャングラー》

 南米アマゾン奥地に秘匿されていた古代インカ帝国の老科学者・長老バゴーとその一族が開発、高坂教授がその図面を日本に持ち帰り、高坂博士とは知己の間柄であった立花藤兵衛が製作した、アマゾンライダー専用マシンといわれる。
 その製作に秘められているエピソードは、こうだ。



 高坂博士から預けられたという謎の図面を前に、立花藤兵衛は困惑していた。その生物とも機械とも読みとれる3面図は、4足歩行の爬虫類をもとに、思いつきで前後に転輪をくくりつけたとしか考えられないのだ。
 これが本当にインカ帝国の遺産の図面なのか? 明らかに現代技術との融合が図られているそれは、立花の目にはオートバイと“生体改造を施されたトカゲか魚類”の、半機械生命体に映っていた。
 操舵輪と駆動輪の製作は立花にもノウハウがあるが、このマシンのボディの材質や、動力源となる“太陽の石”という鉱石をどこから手に入れればいいのか? その未知なる動力源からパワーを取り出す技術をどう解決すればいいのか。アマゾンと名乗る謎のキマイラ青年の、片言にもならない日本語では見当もつかなかった。
 立花は仕方なく、海外で生活している本郷猛と一文字隼人を呼び戻した。
 猛はIQ600もの超天才生科学者であり、隼人は対ショッカー追撃戦で一時期、南米に赴任した経緯がある。
 帰国した二人の活躍はめざましかった。隼人は図面と一対の情報源として、アマゾンが持っていたというキープと呼ばれる縄文字文書を解読し、ボディや各部のパーツ製作に必要な素材の生化学構造式を取り出した。構造式に基づき、猛が素材を復元する。
 太陽の石は、その情報がキープにも記されていたが、アマゾンのギギの腕輪と、奪われたガガの腕輪を組み合わせなければ、アマゾンの体内の“それ”を発動させることは出来ないとわかった。
 このことはアマゾンにとっては第一級の機密事項で、敵に知られてはならない。だが“石”の存在と研究は、ショッカーにおいても進められていたもので、彼等、仮面ライダーの起源にもかかわりを持つ超古代技術であった。
 その技術は未完成ながらも、ある触媒をもとに、わずかな水を使って分子崩壊による熱エネルギー変換を促しタービンを稼動させる、サイクロンやハリケーン、ハヤテの動力と酷似していた。
 サイクロンなどのマシンに、原子力が用いられているという噂は、噂に過ぎない。熱核反応炉をオートバイのエンジンサイズに収めることなど、不可能に等しいうえ、メンテナンスもままならない。
 そして“太陽の石”が到達点となるであろう、このエネルギー転換システムは、現段階で魔法瓶程度の反応炉を実現しており、エネルギー転換率では核分裂をも超えるテクノロジーなのだ。
 猛は、このテクノロジーに取り組んでいたショッカーを、唯一評価していた。その研究を引き継ぎ、現時点で組み込める最善の対策を、このマシンに与えることとなった。
 キープのもたらした情報には、もう一つ驚くべき生化学技術があった。それに記録されていたアミノ酸などの組み合わせ実験によって、稚拙ではあるものの、人工脳と呼べる制御デバイスが完成したのである。これはもとの生体機械に搭載されていたものらしく、復元されたマシンへの応用も可能であった。

 隼人は言った。
「どうも南米の奥地は秘密の宝庫のようだな。密林から生まれたマシン、ジャングラーって名前はどうだ?」



※ このエピソードは例の如くつくばーどオリジナルです。

《劇中に登場していたのは・・・》
生体マシン・ジャングラーが再生されるまでのツナギとして、立花さんが図面をもとに仕立て上げたレプリカだった???・・・ってことで。
しかしこのレプリカジャングラーは、純然たるオートバイなので、立花さんはまず、機械を極度に嫌うアマゾンに、オートバイを慣れさせるのに苦労したようです(いいのかなあこんなこと書いて・・・)