《時を超えて蘇る》

 BLACK‐SUNこと南光太郎は、セクトとして創設されたゴルゴムを離反し半世紀にわたって隠遁生活を続けていた。彼がまだ若かりし頃、理想と未来のために身を投じていたゴルゴムはその間に政治政党に拡充され、社会を裏側から牛耳るほどに巨大化していたが、その拠り所である創世王の寿命が近づき、後継者として創り出された彼と旧友の秋月信彦・SHADOW‐MOONによる世紀王の座を賭けた戦いに巻き込まれ、創生王自身を葬り去る決戦に臨んでいくことになった。
 光太郎にはゴルゴム内のわずかな味方と改造された自らの肉体、そしてカスタムバイクしか頼れるものはなかった。この古めかしいバイクをいつ、誰がそう呼んだのかは定かでないが、BLACK‐SUNの愛機はBATTLE‐HOPPERと云う・・・


 BATTLE‐HOPPERはHONDAが60年代末に産み落としたCB750FOURの系譜である車体が基となっているようだ。
 しかしここに些細な疑問が生じる。光太郎はゴルゴムに身を寄せていた70年代、このバイクに乗っていたのだが、細部を観察していくと、RAJAY INDUSTRIES,INC.と刻印されたターボチャージャー、放熱穴の無いフロントディスク、ホイールデザインなどから、この車体は80年に登場した欧州仕様のCB750Fではないかと推測できるからだ。
 だがまさに些細な疑問であり、当時各界に浸透し始めていたゴルゴムが、二輪メーカーで開発段階の車体乃至エンジンその他のパーツを市販より前に調達することは雑作も無かったのだろう。
 むしろ、どのようなスタッフがゴルゴム内に所在し、どれだけのスペックをこの車体に与えたかの方が大きな謎だ。
 半世紀もの時を超えて、再び戦いの道を選んだ光太郎は、世紀王の器を持つとしても年老いていた。その彼にとって、往時のままの姿であるBATTLE‐HOPPERは唯一無二の戦友なのだ。