《磁雷矢の黒星馬》

 世紀の秘宝“パコ”を狙って鬼忍・毒斎率いる妖魔一族が暗躍する。数千年前に宇宙から飛来したと伝えられる、聖なる秘宝パコ。代々パコの警護をつとめてきた戸隠流忍者宗家の34代目当主・山地哲山は、養子である山地闘破にジライヤスーツを与え、パコの警護を命じた。闘破は戸隠流正統・磁雷矢を名乗り、妖魔一族との戦いを繰り広げる傍ら、世界中から挑んでくる様々な世界忍者たちと忍術対決を続ける。
 山地闘破は、17歳の若者だといううわさがある。いずれ戸隠流忍者宗家35代目の当主に就く身ではあるが、なんと自分のクルマを持っている。
 運転免許はどうなっているのか?(仮免くらいまでは行っているのか?)謎なのだが、妖魔も世界忍者たちも、そんなことを考える余裕を与えてくれないから、ついつい疑問を放棄してしまう。
 彼の愛車は、3代目フェアレディZ・Z31系のTバールーフ。
 Z31系は、オーバー200km/hを達成させるという走行性能をテーマに開発されたモデルで、その目標は250km/hを掲げていた。この開発では、新しいパワーユニットとしてVG系のV型6気筒エンジンが登場した。試作されたエンジンは400基以上にのぼると言われ、延べ1万時間もの耐久試験、90万kmに及ぶ車両耐久実験が行われている。その成果は、欧米のスポーツカーや高性能サルーンを凌ぐ高速操縦安定性を達成した。
 しかし、そんなことには妖魔も世界忍者もひるまない。
 次々と遅い来る敵の猛攻に、改良型のジライヤスーツと磁光真空剣だけでは、闘破の負担が大きいと判断した哲山は、「忍術と科学の融合」という課題を、一番弟子を名乗るアメリカ人科学者・スミスに与え、Z31の改造を依頼した。


 その答えが、外観はZ31のシルエットを踏襲し、超高性能レーダー、リトラクタブルライトユニット内のポップアップ式マシンガン、ミサイルやアンカーを射出するボンネット内蔵のランチャーなど、数々の特殊装備を搭載した。リアホイールには、敵車輌のタイヤを切り裂くホイールカッターも装備されており、これで各部ディメンションはZ31のまま、重量も1470kgに収められ、最高速度は310km/hへとパワーアップされている。
 しかし、ちょっと待て。ボンネット内蔵型のランチャーは、その体積や内容から、エンジンルームに内蔵できるとは考えにくい。ひょっとして、この黒いマシン、ブラックセイバーは、Z31のシルエットを残しながらも、大幅なエンジンレイアウトの変更が施されているのではないか? その推測の一端は、もちろんボンネット内蔵ランチャーの存在だが、リアデッキに取り付けられた二本のダクトらしきユニットが、吸排気などの機能を果たしているようにも見える。
 スミス博士はジライヤの新装備の開発に尽力しているが、それ以前はアメリカ合衆国の“スターウォーズ計画”に取り込まれ、研究素材を利用される立場にあった。それをよしとせず哲山の手を借りて亡命し、かくまわれているという人物なのである。
 そしてなにより、スミス博士は天才科学者。ジライヤスーツと磁光真空剣は、300光年の彼方から飛来した隕石にによってもたらされた物質でできている。その成分を解明し、応用技術を、スミス博士は成功しており、スーツや武装開発に充てているのだ。
 ブラックセイバーの材質レベルにまで手を入れているかもしれない。Z31をRR駆動に改造してしまうことくらい、朝飯前なのだ!(たぶん)
 しかしスミス博士は「忍法の中に科学技術を生かし、科学技術と融合した忍法を通じて世界の平和を守ること」が夢だとだけ、コメントするのみだ。

 ブラックセイバーに寄り添っているお姉さんは何者か?
 そんなこと知りません。