《蒼き槍騎兵の都市伝説》

 万物の霊長となるべく地上に誕生した生命体には、それぞれ異なる属性を備えた53の種が存在した。
 その肉体は不死身であり、個々の生存を賭けた闘いが繰り広げられ、約1万年前に形跡が途絶えた。彼等の活動を封じ、勝ち残った生命体が人類の祖先だと言われている。それはしかし、進化論の理屈から逸脱した闇の歴史だ。
 この地球生命起源の謎と、人類の進化の謎を探求する人類基盤史研究所「BOARD」は、形跡を閉ざした不死身の生命体をアンデッドと呼び、彼等が何者かの力で封印されたカードの幾種類かを手に入れていた。
 アンデッドの命を奪うことは不可能だが、ラウズカードと呼ばれる封印によって活動を抑え込み、逆にカードの応用で封印したアンデッドの能力を引き出すことが明らかにされていた。
 ある日、「BOARD」内部でアンデッドの封印が解かれるというトラブルが起こり、街に野に、アンデッドが解き放たれてしまった。その事件以前から、未封印のアンデッドを捕獲するために、「BOARD」は装甲強化服・ライダーシステムを開発し、二人の鎧の男がアンデッドとの戦いを始めていた。


 剣崎一真は、二人目のライダー、ブレイドとして「BOARD」からスカウトされ、専門訓練を受けつつ、専用マシン「ブルースペイダー」を貸与されている。
 ブルースペイダーは最高速度340km/h、最大出力320馬力、最大トルク45kgものスペックを誇るデュアルパーパスマシンで、コンクリートの壁を突き破るオリハルコンプラチナ製耐衝撃ボディに、制御コンピュータSPC−NEXASSを搭載している。NEXASSはブレイドのアーマー制御にも用いられており、ブレイドの装着者による遠隔操作にも活用できる。
 フロントカウルのヘッドライトには、航法用車載カメラ、左右ウインカーには光学式ツーリングセンサーが内蔵され、無人走行が可能となっている。駆動システムはリニアモーター方式がとられ、最大加速時には別系統の補助ジェットエンジン・ドラッグブーストが作動する。制動能力は、前後のマグネブレーキによって、最高速度からわずか30mで停止できる。
 動力にはAB27Eアトミックブラストという超小型原子力エンジンが搭載されているというが、多くの情報を秘匿している「BOARD」のことであるから、情報攪乱のための虚偽のデータと見るのが妥当だろう。
 このほか、特殊能力発動用のカードリーダー・モビルラウザーも装備されている。このシステムは、ライダー同様にラウズカードの力を付加することが可能で、スペード6「サンダー」のラウズカードをラウズさせることで「サンダースペイダー」という能力が発動する。
 「BOARD」そのものはアンデッドの反撃によって壊滅し、ブルースペイダーもライダーブレイドと共に組織だったメンテナンスを受けることができなくなっている。ブレイドこと剣崎は、「BOARD」での養成訓練期間中、家賃滞納として住居を追われてしまい、偶然に知り合ったフリーライター・白井虎太郎の農場に身を寄せているが、ブルースペイダーはその玄関先に無造作に駐車されている。
 これが実は、“枯れ葉を隠すのは森の中”の効果で、あまりにも無造作な扱いのために、誰もこのマシンが人類をアンデッドから護る都市伝説の鎧の男の武器だとは気づかない。