《闇からの追跡者》


 空冷4ストローク単気筒250cc。フロントからリアへと跳ねあがるアグレッシブなボディに、前・後17インチホイールのオンロードタイヤ。直線的でコンパクトな操作性の高いハンドル。「Motard(モタード)」はXR250シリーズの中でも、ストリート仕様のバイクだ。
 1995年に登場したXRはもともと、オンロードからオフロードまで、軽快で優れた走破性を発揮する“ランドスポーツバイク”と位置づけられている。モタードとは、ヨーロッパを中心に流行している、オフロードバイクに小径ホイールとオンロードタイヤを装着し、舗装路面およびダート路面でスピードを競うレースのことである。
 このモタードを駆るカメラマン、相川始は、実は上級クラスのアンデッドらしい。
 カマキリの属性と異能力を持ち、格闘、スピード、ラウザー武器の初期値のいずれもが、アンデッドのデータから二次、三次的システムとして作り出されたブレイドやギャレンを上回る。



 彼のその異形の姿、カリスへの変身と共に、モタードもその影響を受けて、大きくシルエットを変える。
 最高時速410kmにも達する超高速マシン、シャドーチェイサー。顎のように張り出した、フロントカウルと一体化したフェンダーに、獰猛なイメージが漂う。この変形システムや、スーパーストリートの次元を超えるスペックを引き出すメカニズムは、どこに力の根源があるのか、また何者によって開発されたのかは謎である。
 シャドーチェイサーの基本性能は、変形能力を除外しても、一つひとつがブルースペイダーやレッドランバスを凌駕している。最高出力は推定420馬力、最大トルクも65kgといわれる。フロントカウル内には生体コンピュータ・ブレインボックスが搭載され、カリスの意思をつなぐデバイスとして、サイコステアがリンクに入る。
 リアサイドパネルのふくらみは、動力装置であるシャドージェネレーターに空気を送り込むエレメントコンバーター。ここから吸気されたエアー内の元素を転換し、動力にエネルギーを与えるシステムだといわれるが、その構造は解明されていない。
 フロントフェンダー・クラッシャービークは、超振動と超高熱を発生させ、障害物を粉砕する。モビルラウザーも装備されている。
 このほか、判明している機能をあげると、マグネスナッパー、デュアルサイト(ヘッドライト兼用自動走行制御カメラ)、フォースアウトダクトなど、ブルースペイダー、レッドランバスとの共通点も見られる。ギャレン、ブレイド用のマシン開発には、シャドーチェイサーの基礎データが活かされており、「BOARD」で再構築できたものが、あとの二台に流用されているのかもしれない。
 シャドーチェイサー唯一の性能としては、いかなるライディング状態でもライダーのポジションをを安定させる重力制御シート・アンチグラビティサドルがある。さすがに「BOARD」にも重力制御は荷が重かったらしく、他の二台にのシートは単なるハイグリップラバーが応用されるにとどまっている。