ミリオン出版から2006年6月に発行された「新・仮面ライダー 冒険王ver.完全版」が、遂にショッカーライダー編を収録した。
 ショッカーライダーは「夜な夜な連続殺人」をしていたのではなく、銀行強盗と同時に行員や警官を殺害して逃走していた。よく見ればショッカーライダーのOシグナル部分に十字のラインが加えられており、偽サイクロンのカウルにもゲルショッカーのエンブレムがあしらわれ、車体のマーキングも異なる。
 仮面ライダーとの戦闘も、2ラウンド構成であった。
 初戦は本郷ライダーのみが砂浜で迎撃され、サイクロン・バキュームの攻撃を受けるが、このときショッカーライダー1号は滝和也を人質にとって監視役をしており、戦闘中のショッカーライダーは5人でフォーメーションを組んでいた。
 なにより驚いたのは、本郷ライダーの窮地を救ったのが、改造人間になる以前の風見志郎ったのである。このシーンは、謎の怪人に父親を殺害され、自らも頭部に負傷を負った志郎が、海岸で本郷猛と対話をしているところへショッカーライダーが急襲するものであった。風見家はこのエピソードでは、生化学研究者である父親だけが殺害されており、母、妹の殺害は「V3第1話」まで登場しない。
 第2ラウンドは、石ノ森版仮面ライダーに対するオマージュか、雨のシーン(石ノ森版第1ラウンドの終盤)と森のシーン(同第2ラウンドの舞台)をミックスしており、ショッカーライダー6号を一文字隼人が襲撃して入れ替わっている。オマージュの部分はもう一つあり、森というステージによって、サイクロン・バキュームが封じられていること。石ノ森版では森によってサイクロンを加速できず、変身できないままに本郷猛がショッカーライダーの手にかかってしまうが、こちらでは形勢が完全に逆転し、Wライダーのコンビネーションとニューサイクロンの戦闘力によって、敵を全滅させている。
 なにしろ30年前の連載ですから、ぶつぶつ跳んでいるばかりか、自分の都合の良いようにしか記憶できていないものです。新型のサイクロンを「ニューサイクロン」と呼んでいることが確認できたことは、収穫でした。ついでなので、ニューサイクロンが登場したエピソードもちょこっと。
 初期のサイクロンは、死神博士(うわあ、なんちゅー顔で描かれているのかしら)率いるセミミンガーと海棲怪人との戦闘で、セミミンガーの殺人音波によって粉砕されてしまい、海中に没して回収不能となってしまった。こうしてニューサイクロンの出番がやってくる。水陸両用能力から安定翼による空中戦、サイクロンカッターなど、新型の性能を遺憾なく発揮している。
 ニューサイクロンの開発の経緯は、このエピソードでは語られていない。セミミンガーとの初戦のあと、本郷猛が何処かへ“とりに行っていた”という状況説明が、台詞によって行われているだけである。
 また、常用タイプには偽装されておらず、登場シーンでは、変身前の本郷猛によってライドされている。そのコマが当時はとても印象的であった。このあとのエピソードからは常用タイプに偽装されるが、ショッカーライダー編のあとのヒルカメレオン戦(最終話)では、本郷、一文字ともに、“偽装されていない”ニューサイクロンに乗って登場する。
 なお、死神博士は、冒険王ver.ではこのエピソードにしか出てこない(テレビマガジン版ではたぶんもっと出ていたと思われる)うえに、セミミンガーの自爆に巻き込まれ、潜水艦ごと轟沈、死亡したことになってしまった。このため、次のエピソードでイカデビルが登場するが、地獄大使配下の一般改造人間として扱われている。