《アオイ スペリオン−GT》

 葵自動車のサイバーフォーミュラレーシングチームが、2015年シーズンに投入した前2輪、後4輪構成の、サイバーフォーミュラ初の6輪マシン。V12気筒5000ccのサイバーサイクルエンジン、左右一対のブーストポッドなど、マスの集中が車体後部に偏重しているレイアウトから、その荷重を支え、強力なトラクションを有効活用する意味で、後4輪はアオイチームの特徴となっている。これは葵自動車が広告宣伝材料としてサイバーフォーミュラに参戦しているため、同社の市販車にオーバーラップするシルエットとして、マシン設計が行われたことによる。
 


 このホイールレイアウトは伊達ではなく、全てが駆動輪の6WD。エンジンは水素燃料の内燃機関で16000回転/1450馬力の最高出力を誇り、435km/hをマークする。また、リアフェンダー上部に装備された大型のブーストポッドはピーコックウイングと呼ばれ、90度回転しながら安定翼とともに展開し、爆発的な加速を持続させる。
 基本コンセプトを高速サーキット仕様として開発されているが、GTカーと6WDの組み合わせはラリーステージでも想像以上の耐久性を実現しており、富士岡グランプリにおける高速戦に続く全日本選手権ニセコのオフロード+サーキットの複合レースでも他者を寄せ付けない性能を発揮。世界選手権第2戦のペルーGPで早くも3位に入賞した。このとき、ゴール直前のグラベルセクションでは前走者のクラッシュに巻き込まれ、衝突は回避したものの後輪のひとつがバーストし、その状態から追い上げを見せた。


 スペリオン−GTは、国産自動車により近い姿としてサイバーフォーミュラに登場したことや、ヨーロッパF3チャンピオンを獲得したばかりの新栄レーサー・新条直輝をドライバーに迎えるなど、順風満帆なデビューを飾る。しかしこのマシンと新条選手にとって想定外の出来事も待ち受けていた。続々と新型マシンが頭角を現す2015年シーズン。それはサイバーフォーミュラの第10回記念大会という年回りでもあり、レギュレーションの大幅な拡張的緩和が果たされ、様々な技術トライアルや新素材の投入が認められた。このことは、プライベーターにとってのチャンスばかりでなく、弱小ワークスが飛躍的な進歩を遂げる機会ももたらす。もちろんアオイもその新規格の恩恵を受けているが、最も幸運に恵まれたチームは他に存在した。それが、アスラーダGSXを投入してくるSUGOレーシングである。
 新条選手よりも遙かに若い風見ハヤトという話題は、誰もが「無茶を通り越している」と注目し、そこに、徐々に戦果を上げていくアスラーダGSXの魅力も手伝い、さらにシーズン中盤でのスーパーアスラーダの登場など、GPXのニュースバリューを全てSUGOに持っていかれた感がある。それでも第5戦イギリスGPまで善戦し、翌第6戦からパワーアップしたファイアースペリオン−GTRにスイッチされる。