《正真正銘ショッカー謹製》

 ショッカー科学陣、というより、ショッカーの息のかかった企業が有する科学技術こそが、この組織の底知れぬ恐怖に結び付いている。
 オーグメントと呼ばれる生体改造然り、彼らが行動する際の装備然り、世界中の科学技術がショッカーのもとに供与され、それらは実用化されているようだ。
 しかし、技術やノウハウを提供したであろう様々な企業や団体は、おそらくその目的や用途を知らされていないだろう。バッタオーグと呼ばれる改造人間を例に挙げれば、フルフェイスヘルメットが全く異なる意匠の仮面に変形する工業製品に、社会的な市場が開けるとは思えない。だがバッタオーグ一体の開発のために、想像を絶する生化学、医療、マテリアルなどの技術が惜しみなく投入されていることは事実だ。


 バッタオーグが行動する際、大気の流れからプラーナと称する活力源を摂取するため、これを補佐する装備がサイクロンだ。スイッチ一つで偽装されたデュアルパーパスバイクがフルカウルへと変形し、車体に格納されているらしい六本のブースターノズルが展開する。
 優れたオートバランス機構も備えており、バッタオーグが乗らなくとも自立し、走行が可能。二輪メーカーの持つテクノロジーをベースに、常人には乗りこなせないハイパワーと高速戦闘能力を与えられたマシンだ。言うまでもなく、ショッカーが秘密裏に発注を行っている。
 ショッカーの財力の片鱗は、このマシンを一気に13台も投入できることにある。そのうち11台は組織を裏切った2人のバッタオーグを討伐するために使われたが全て返り討ちに遭い破壊された。残る2台は蝶オーグとの対戦時に失われている。
 バッタオーグ第2号こと一文字隼人は、この戦いで命を落とした1号・本郷猛の意志を引き継ぎ、政府筋から新しい戦闘服と仮面とともに、新型のサイクロンを受領するが、新型に関しては何一つ性能も出自もわかっていない。