《俺、バイクにも乗るぜ》
 野上良太郎は、世界一不幸な18歳の若者。在宅していても道ばたを歩いていても、ろくな目に遭わない上に、それを跳ね返すほどの強気さもない。弱気は更に不幸を呼び続けるのだが、実は彼には、一部の存在だけが有する、時間からの干渉を受けない「特異点」という素性が秘められていた。
 偶然出逢った時間旅行者、ハナによって特異点であることを見出され、「電王」の資格者に選ばれてしまったのも、やっぱり不幸のループと思われる。
 良太郎の暮らす2007年の世界では、未来社会の人類・イマジンが精神体の姿で時空を越えてきては人に憑依し、世界の秩序を狂わすという事件が続発していた。良太郎にも何体かのイマジンが憑依の契約を迫ってきたが、イマジンは特異点への干渉が制限されており、特異点の人間はイマジンに憑依されても肉体までは支配されない。この特性を応用したシステムが「電王」だ。
 プラットフォームと呼ばれる戦闘スーツに、憑依したイマジンをフリーエネルギーに転換し、その特性を内包した「電仮面」を装備することで、良太郎は4形態の「電王」に変身。各イマジンと肉体を共有しながら、人に仇なすイマジンを追撃するのであった。

 マシンデンバードは、「電王」の単独機動力として開発されたと思われるデバイス。現代社会の自動二輪が、未来社会においても最小単位の機動力として重宝されているらしい。
 未来社会、という言葉が適当かどうかは定かではないが、時空間航行をしていたハナは、デンライナーと呼ばれる列車型タイムマシンに乗っており、デンバードもこの列車内に格納されていたことから、デンライナー共々、どこかの未来時代で実用化されたのではないかと推測される。
 オートバイでありながら、デンバードはデンライナーの先頭車両に格納され、そのまま「電王」によるデンライナーの操縦システムとしてリンクする。「電王」がデンライナーの外で戦う際に、オートバイとしての機能が発揮される。
 全長:2130mm、全幅:790mm、全高:1180mm(高速時の全高:1390mm。リアカウルののパンタグラフが起きる)。通常時速は360kmを誇るが、リアカウルに納められている集電装置・デンギャザーを立て、フリーエネルギーを取り込み、電気変換してマシンに供給することで、時速1010kmに達する。
 デンギャザーで変換された電気は、デンバードの動力であるアラゴドライブエンジンに搭載されたデンメタルとの間で渦電流を生じて磁界を発生させ、駆動力を生み出す。
 フロントカウルの前照灯・デンバードライトは、10,000Kの電光照射で200m先の暗闇を真昼のように照らし出す。補助灯には赤外線、X線レーザー機能が付加されており、走行時の障害物を探知する。障害物や敵対するイマジンには、フロントフォークに装備した衝撃集中爆弾をミサイルとして射出できる。

 かくして「電車に乗ってたら仮面ライダーじゃないだろう」と危惧された「電王」も、立派にライダーであった。モモタロスの「どうだまいったかぁ」という声が聞こえてきそうだ。