《 ハ ヤ テ 》


 「ハヤテ」は対デストロン戦において、プルトンミサイルの爆発から生還したライダーマン・結城丈二のために本郷猛が設計・開発し、立花モータースにおいて制作されたライダーマン専用マシンである。
 ベースには旧型のサイクロンが採用されているが、本郷猛、一文字隼人共に、バトルライドという場面で乗りこなすことが難しく、改良型からニューサイクロンへ移行した経緯もあり、パワー・トルクの出力はデチューンされたものとなっている。
 最大の特徴は、かつてのサイクロンのシルエットを廃したカウルレスのボディと、ライダーマン独自の戦力である「カセットアーム・アタッチメント」を、大型のものに限って車体前後に装備できるハードポイントを設定したことである。
 このハードポイントに装備されたアタッチメントは、ライダーマンの腕に装着しなくとも運用が可能で、ライダーマンの脳波通信によって起動する。ただし車体後方に向けて設置してあるアタッチメントについては、射出角度などの調節が間に入るため、更なる改良の余地が残されている。
 サイクロンではリアカウルの位置にあたる大型トランク内には、変身装備や、小型のアタッチメント各種が格納されている。また、後部ケース内には、それらの装備をライダーマンに転送する物質転送システムがあり、これが「ハヤテ」の心臓部とも言える。
 なお「ハヤテ」という呼称は一文字隼人の命名によるもので、本郷猛は「月光」、風見志郎は「モンスーン」という候補をあげていた。これがまとまらず、立花藤兵衛があみだくじを作って公平に命名権を決めさせたらしい。

 結城丈二の生還には秘密がある。
 洋上でダブルライダーに救出されたとき、彼はプルトンミサイルの自爆によって全身を焼かれ、骨格も関節をすべて粉砕され、内臓破裂と心停止状態にあった。
 これを救ったのは、サイバネティクスの研究を進めていた科学者・神啓太郎教授と神教授の研究ドックでもある「神ステーション」であった。
 教授は、海上で起きた謎の核爆発を調査するため、神ステーションを偶然にも、プルトンミサイルの破片の墜落地点に浮上させたのである。
 神教授は、近未来の地球環境と資源枯渇の時代を憂い、人類の新たな生活空間として海洋開発の必要性を論じ、自らのサイバネティクス技術研究を深海開発用途へと特化した「カイゾーグ」の開発を理論上完成しつつあった。
 教授にとっての最後の壁は、カイゾーグの臨床実験に踏み切れないということと、仮に倫理の枷を破ったとしても、テストベッドとなる被験者を獲得する術がないということであった。
 教授は、損壊した結城丈二の身体をカイゾーグのそれに置き換え、脳髄と神経系の移植を行うことで、生命を救うことは可能だと、ダブルライダーに告げた。本郷、一文字とも、この提案にはすがりつきたい思いであったが、自分たちが乗り越えなくてはならなかった改造人間の苦悩を、またひとつ産み落とすことになることを躊躇した。
 その迷いを断ち切らせたのは、洋上から遙か彼方の日本で、デストロンを壊滅させた仮面ライダーV3・風見志郎からの脳波通信だった。
 デストロン首領は倒したものの、ゲルショッカー壊滅の時と同じように、ダミーではないかという疑念をぬぐい去れないというのだ。もしも自分が倒した首領が替え玉であったなら、そんなもののために結城丈二を犬死にさせることはできない。
 それが風見の主張だった。
 ダブルライダーは苦渋の決意をし、神教授の補佐を行いながらプロトカイゾーグの制作に取りかかることとなったその期間は、デストロン崩壊から約1ヶ月後までかかっている。


 本郷猛は、ライダーマンの再生改造手術を終えたあと、神教授からカイゾーグ専用マシン「クルーザー」の設計についてアドバイスを求められた。
 クルーザーは既に完成していたが、なぜ深海開発用カイゾーグの運用という前提のマシンがオートバイの形態をしているのか本郷は困惑した 教授はこれに対して、クルーザー用の換装システムを用意していると説明した。
 水上走行はクルーザー単体でも可能だが、実際には、クルーザーのハードポイントに専用フロートを設置し、水上での安定性を高めるのだという。このフロートはサイドカーのボートの応用で取り付けられるもので、潜航時にはバラストの役目も果たすという。それらは神ステーションに待機し、カイゾーグの要請に応じて、転送フィールドジェネレータを起動し、半径50km以内の現場海域になら自在に転送できる。
 問題は、これらの増加フロートを取り付けると、クルーザーの推進力が安定しないことで、クルーザー本体の大きさに収めたエンジンでは直進すらできないのだと、教授はつぶやいた。


 本郷は、水中航行時の推進力を別に備え、これをクルーザー前部のカウルに装備して、推進軸を左右に一基ずつ増やしてはどうかと提案した。陸上や水上では補助機関の役割しか果たせない配置だが、水中では後方に置くよりも推進軸の変化を自在にとりやすく、フロートバラストを装備したクルーザーでも、安定した方向転換や浮上、先行が可能だと、本郷は予測した。
 こうして、クルーザーはフロントカウル左右に補助推進ポッドを持つ、あのスタイルへと仕上がっていくのだが、本郷自身はクルーザーの完成まではタッチしていない。後に「仮面ライダーX」と出会ったとき、この補助推進ポッドに何故かレシプロローターが付いていることで、彼が再び首を傾げたという逸話があるようだ。
 補助ポッドの設置については、もともと、サイクロンシリーズの後継機となったハリケーンに、固定・格納式安定翼と補助ロケットブースターを取り付けた経緯がある。クルーザーへもこれを応用したのである。
 車体本体のカウルデザインがあまりにも異なり、またクルーザーの補助推進ポッドが巨大であるから、一見気が付かないことだが、ハリケーンとクルーザーの車体の基本構成は、実は非常に似ているのである。
 本郷がライダーマン専用のマシンを開発するにあたっても、ライダーマンのカセットアームをいかに効率よく運用するかをポイントとした結果「ハヤテ」にはハリケーンとクルーザーの中間的な案として、手持ち武器の着脱式ハードポイントという案が導入された。
 神ステーションからは、アタッチメント転送用のフィールドジェネレーターの試作品を譲り受けた。これによって、ライダーマンの強化スーツやヘルメット、各種アタッチメントを「ハヤテ」のコンテナやハードポイントに格納・設置し、結城丈二の脳波コントロールによって装備させるシステムを実現している。

《ハヤテ以前のライダーマンマシーン》

 動力に小型原子力エンジンを使っているというが、それは眉唾物である。
 開発はデストロン内部で、結城丈二が脱走時に奪ったあとで独自の改良を加えたのか、脱走後の結城が1から開発したのかは不明。
 しかし、場面によってボディ色の異なるマシンを使い分けているため、複数の同形車両が存在する。 このことから、結城のシンパとも言うべき反デストロン勢力によって、開発や整備が賄われていたのかもしれない。
 外観にはなにひとつ特徴はないが、シート内部には変身用ヘルメットとカセットアームが収納される。