《第二次地球降下作戦の個人兵装》

 2080年代、地球は異星人インビットの侵略を受け、人類は火星に追いやられていた。地球奪還を図るため、二度にわたる地球降下作戦が決行されたものの、そのいずれもがインビットの迎撃によって破綻した。泥沼化する戦線に降り立ったパイロット、ソルジャーたちは、逃亡し、狩られる者と、ゲリラ戦を展開して戦列を立て直そうとする者とが入り乱れ、憔悴していた。
 彼等はかろうじて維持するに至った可変戦闘機レギオスや、アーマーサイクル・モスピーダを駆使し、インビットの本拠地と言われる北米大陸のレフレックスポイントを目指して戦いの道を走り続ける。

 アーマーサイクル・モスピーダは「軍事作戦用兵士防御式緊急時飛行体系降下車両」の略称から名付けられた。Military Operation Soldier Protect Emergency Aviation Dive Autoと表記する。この武装は第1次降下作戦時から投入されていた個人兵装だ。可変戦闘機レギオスのパイロットスーツを兼ねるライディングスーツに装着する簡易装甲服として、レギオス機体内に格納してあり、パイロットが歩兵に転じた際、機動力を補うために、モーターサイクル形態として機能し、同時にその車体がライドアーマーに変形して兵士の装甲に活用される。
 VR−052式は、第2次降下作戦に投入されたアーマーサイクルで、指揮官用のF型と、一般兵士用のT型とに大別される。F型はフロントホイール部の装甲(装甲服時には両腕の装甲となる)に、左右合計4発のロケットランチャーを装備する。破壊力はインビットの機動兵器にダメージを与えられるものの、装弾数の少なさがウイークポイント。T型にはこの装備はなく、40mmビーム機銃が取り付けられている。F型を使用していたマーズベースの降下隊員スティック・バーナードは、カウルに60mmビームキャノンを追加装備していた。
 全長2050mm、乾燥重量132kg。最大巡航速度220km/h、最大航続距離約380km。最大出力98hp/16000rpmが052式のスペック。動力は内燃機関を採用しており、HBTと呼ばれる燃料をカートリッジによって補給する。この時代の地球人類は、機動兵器に関してはほぼ共通の動力システムを用いており、レギオスや支援機のトレッドにもHBT燃料が必要とされている。
 モスピーダはこの種の歩兵用装備の共通規格名なのだが、一般的にその呼称を車体にそのまま与えられているのは、052式の特徴でもある。052式以外には、女性兵士専用の軽量化タイプであるVR−038L「バートレー」、ミサイルポッドや高周波ブレードを装備した重攻撃型のVR−041H「ブロウスーペリア」など、固有名を持つタイプが存在する。また、第3次降下作戦時には、ステルス性能を附加された「ダークモスピーダ」も投入された。これは、二度の作戦の失敗の要因が、インビットがHBTに反応し、人類側を索敵・攻撃してくる特性への対応策として、HBT反応の出ない武装を施したものだ。