《ライダー用規格品》
 ゼクトロンといえば、縁日で金魚の替わりにすくわれている“あれ”の誕生にもエピソードがある。1966年にアメリカから上陸した、あの“スーパーボール”のことだ。
 スーパーボールは、「新合成物質ゼクトロン」を配合し、「5万ポンドの圧力で圧縮されたエネルギーが封印されている」という、当時の子供たちにとっては、とてつもないテクノロジーの産物だったのだ。
 その超弾力は、力を加えれば加えるほど、高く、遠く跳ねるスーパーボール。子供の腕力などでは押しつぶすこともできない、謎と憧れに満ちたアイテムだった・・・

 が・・・もちろん、このマシンゼクトロンとスーパーボールには、何の因果関係もない。

 マシンゼクトロンは、ZECTに所属する仮面ライダーの共通標準装備。フロントカウルのシールド部分に描かれたマーキングで、どのライダーが運用しているかを識別できる。
 シート後部のコンテナリッドを展開すると、小型武器の射出機構が装備されている。この部分が、カブトエクステンダーのキャスト・オフ機構に替わる、ゼクトロンの特徴の一つだ。
 カウルを外したカブトエクステンダーと比較してみると、やはりRC211Vに用いられたユニット・プロリンク・サスペンションやセンターアップ・エキゾーストシステム、燃料タンクの設置場所など、共通項が見受けられる。
 スタイリングもRC211Vにならったマスの集中を実現しており、操縦安定性の向上を図っているようだ。リアの射出ユニットを追加することで、そのバランスは崩れるという見方もあるが、程度問題だろう。
 カブト用マシンのみ、なぜ差別化されているのかは不明だが、ゼクトロンは同一スペックのままザビー、ドレイク、サソードなどの仮面ライダーに支給される。
 ZECTの一般戦闘員であるゼクトルーパーのスーツやマスクなど、標準装備にみられるコスト削減としか思えないいい加減なデザインに比べれば、ゼクトロンは量産型とはいえ、まだマシなのかもしれない。
 ところで、カブトエクステンダーにも確認されている、シート上のごついパーツは、乗車時に大いに邪魔になりそうだ。これは運用中の各マシンには見あたらないものである。
 おそらくZECTでの開発時に、盗難防止のために取り付けられた搭乗拒絶のロック機構ではないだろうか? 登録されたライダーが跨るか、あるいはロックを解除すると、このブロックはシート内部に沈み込むか、車体から外すことができるのだろう。
 しかし、カブトエクステンダーは天道総司に奪い取られている。これは、加賀美新がカブトエクステンダーを最初に持ち出した時点で、ロックを解いているからだと、状況から推測される。